東久留米市――ホトケドジョウのカチューシャには参った
東久留米市は地域資源PRキャラクター湧水の妖精るるめちゃんの蓋を4種類4枚作った。とてもメルヘンで素敵な蓋だ。デザ貼りマンホール蓋のように印刷したカラー画像を貼ったものでは無く、鋳物の凹凸でデザイン画像が構成されている、職人が1枚1枚にカラー樹脂を充填して製作したデザインマンホール蓋だ。
シンプルであることは力強さを生む。キャラクターのかわいらしさと、そのシンプルさがとても良い。しかしシンプルに見えるようでいて沢山の情報が込められている。るるめちゃんの頭にいるドジョウは、天然記念物のホトケドジョウのカチューシャだ。耳の青い粒は東久留米市の名産ブルーベリー。
シンプルな力強さの中に、細かいディティールがあって良い。鋳物のデザインがそれをどっしりと受け止めている。ホトケドジョウのカチューシャには参った。無理やり感をつらぬく実直さがすごい。このカチューシャは商品化したほうがいいんじゃないだろうか。
駅を挟んで東口と西口に1枚ずつ設置されている。湧水の妖精だけあって水の上を揺蕩っている。シンプルな力強さがやはり良い。鋳物のマンホール蓋に最適化された凸の線が細すぎず太すぎず、シンプルさとどっしりとした力強さを成立させている。
よく見ると、ホワイトなどの点があしらわれている。
こういう手法は珍しい。カラー塗料の上にカラー塗料を乗せている。大量生産で同じものを作るのには向いてない。よく見ると発見できるレベルの職人のこだわりだ。1枚だけの特別な蓋という事もあり、職人さんの遊び心とサービス精神が発揮されたのだろうか。大手の鋳物メーカーがあまりしない仕事内容にみえる。
一部のカラー樹脂に荒れがある。世田谷のバルタン星人蓋の鏡面仕上げのようにカラー樹脂充填する手法と、すべり防止を考えて立川市のようにセラミック粉黛塗装にする手法があるが、この蓋はその中間のような表面仕上げになっている。ガサガサしている。
えぐれるようにガサガサしてしまったのは、技術的な問題だろう。カラー樹脂の粘度と乾燥までの時間の関係で荒れる時がある。粘度が高く、乾燥が早いと作りやすいが荒れやすい。納期と手間の問題や、作業場所、メーカーのポリシーなどにも思いを馳せる。面白い。
かわいいものを小学校のまわりに設置する、大正義だ
4枚のうち残り2枚が小学校の近くに設置されている。かわいい蓋を小学校の近くに置いちゃおうという久留米市の無邪気な気持ちがすけて見える。この2枚に関しては観光資源化を考えず、かわいいものを小学校の前に設置するという絶対正義を感じる。
「あー、かわいいー」というコミュニケーションが小学生の間で交わされているはずだ。すごく良い。素敵なコミュニケーションだなと感心する。かわいいものを小学校のまわりに設置する、大正義だ。小学生に向けた下水道広報の教育効果もある。全面鋳物デザインの蓋で作っているので長く使用され、長く愛されるだろう。こちらまで嬉しい気持ちになる。
よく見るとこの蓋もまた細かい塗装の仕事をしている。ハイライトの別カラーを入れたりもしている。はじめは汚れかなと思ったが違う。鋳物の凹に1つ1つカラー樹脂を入れて、乾いた後にさらに色をのせる。こだわりが凄い。
普通色数が増えると製作費が上がる。発注側はこんな細かい色指定はしなかったと思う。色を入れた職人さんの遊び心、サービスなんだと思う。やはり大手の鋳物メーカーの仕事には見えない。技術的な問題も目に付くが、細かい仕事に愛を感じる。不器用で甘酸っぱい愛なのかもしれない。
そんなことを考えると愛おしさが増してくる。するどい観察眼なのか、曇ってひねくれた物の見方なのか自分でもよく分からない。ただ楽しい。
マンホールカード配布場所
東久留米市
東久留米市1階市民プラザ事務室(東久留米市本町3-3-1 東久留米市役所内)
配布時間:8時30分~21時30分(年末年始、施設点検日お休み)