22億円の区費を投入して計70床増やす
田中 新型コロナウイルスに感染した人の治療は、指定病院と協力病院という2階建てで進められています。大まかにいって都内に15ある指定病院で重症者を受け入れ、協力病院では軽症・中等症の診療を行います。ところが、都は協力病院がどこにあって、それぞれ何床あるか公表しておらず、我々にも明らかにしていません。これでは都区の連携は
一方、杉並区は、医師会、病院と緊密に連携してきたので情報を共有しています。ウイルス対策用の病床がいっぱいで、感染者を救急科で受け入れたため、救急搬送を断らざるを得なくなるなどした苦しい胸の内を病院から直に聞いてきました。そこで、区民を守るために増床しようと話し合いました。既にウイルス対策用の病床がある2院に、新たに2院を加え、今後は4院で計70床ほど増やしていくつもりです。このため22億円以上の区費を投入します。
ただし、ウイルス対策の病床を増やすと、通常の診療がダメージを受けます。病棟を一部削らなければならなくなるのに加え、風評被害も起きかねないからです。院内感染のリスクも高まります。それでも4院は立ち上がりました。時限的に半ば区営のような形にし、一丸となって対策を進めます。
――4院ではそれぞれテントやプレハブの発熱外来センターの設置が進んでいます。
「区が出すなら出さない」は理解できない
田中 感染の疑いがある人が一般の診療所を受診すると、移るかもしれない
既に40人ほどが手を挙げています。感染の危険性があるのに、自分の診療所を休診にして来てくれるのです。数をこなすため、手慣れた医師にはかなりの日数詰めてもらうことになりそうです。都はこうした場合の日当として、開業医に1日当たり約3万円を補助していますが、これだけでは診療所の人件費や家賃は払えません。そこで区は1日当たり約16万円を上乗せすることにしました。
ところが、都は「区が出すなら出さない」と言い出しました。医師に心置きなくウイルスと闘ってもらうためなのに、私は都の対応を理解できませんでした。そこで知恵を絞りました。都には補助を出させるべきだと考えたので、区は「休診協力金」という別名目で開業医に支出することにしました。
――感染者はさらに増加すると見られていますが、区職員もこれからはウイルスに触れる現場に出るのですか。
田中 そうなると思います。このため、せめてもの手当てとして1日4000円を超えない範囲で支給することにしました。今後は景気の悪化が見込まれ、23区でも税収減が予想されていますが、今やるべきことをきっちりやらないと、ウイルスとの闘いには勝てません。
撮影=葉上太郎