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『猫を棄てる』の挿絵を描いたのは? 台湾の高妍さんが語る「村上春樹さんとの出会い」

初めて読んだのは『ノルウェイの森』でした

2020/04/24
note

台湾人なら誰でも「村上春樹」を知っている

――台湾において、一般に村上春樹さんはどのような存在なのでしょうか。

 台湾人なら誰でも知っている日本の作家です。作品を読んだことがなくても、どの年代の人でも、必ず“村上(ツンシャン)春樹(チュンシュー)”を知っています。私も小学生時代には既に知っていました。

 村上さんの作品は、読み手とともに作品も変化していく感じがします。違うタイミング、違う年齢で読むと、受ける印象も変わってくる。一緒に成長できる存在なんです。私は今でも落ち込んだら『ノルウェイの森』を読みかえすのですが、そうすると昔は読み流していた部分でも、共感できたり、新たな気づきがあったりします。

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台湾芸術大学卒業後は、沖縄県立芸術大学に短期留学したという。「学校に行くよりも、旅行をしたり、何かの作品の世界に思い切り浸ることの方が好きでした」

――高さんは日本の音楽もお好きだと伺いました。特に影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか。

細野晴臣さんに届いた漫画『緑の歌』

 「はっぴいえんど」ですね。最初は、浅野いにおさんの漫画『うみべの女の子』で、『風をあつめて』という曲を知ったんです。その後、大学3年の時に初めて日本を訪れたのですが、一番の目的ははっぴいえんどのアルバム『風街ろまん』を買うことでした。日本に到着してレコード店に直行したところ、その時に店内に流れていた曲がかなり自分好みで、店員さんに訊いてみたら「これですよ」と。

 その場では特段気にもせず購入して、ホテルに戻ってじっくり見たら、それも細野晴臣さんの『HOSONO HOUSE』というアルバムだったんです。それでなんだか縁を感じて、どんどんのめり込んでいきました。

「細野さんの日本でのライブにも行ってみたいな。でもお金もないし、学校もはじまるし……」。それからしばらくの間、そんなふうに思いを巡らせていたら、なんと細野さんの台湾公演決定のニュースが飛び込んできたんです! そのときの嬉しいような怖いような、不思議な気持ちを『緑の歌』という漫画にしました。“緑”は、『ノルウェイの森』の小林緑からいただきました。

細野晴臣さん ©文藝春秋

――ここでも村上さんの作品と繋がるのですね。

 『緑の歌』は台湾の繁体字のみで500部しか刷っていないのに、どういうわけかはっぴいえんどの松本隆さんの手元に渡って、そこから細野さんにまで届いたんです。誰かが「台湾にこういうファンがいるよ」と紹介してくれたらしいのですが、それがきっかけで細野さんの2回目の台湾公演の際に、直接お会いする機会をいただけて。そこにいたるまでのひとつひとつは、どれも小さな出来事だったかもしれませんが、最後にはとてつもなく大きなものになって自分に戻ってきたことに、本当に感動しました。

――高さんの漫画『間隙・すきま』も、日本語版が電子コミックとして発売されましたね。