「これからも皆が相携え、いたわり合って、この不幸な時期を乗り越えることを衷心より願っています」

 上皇陛下は東日本大震災の発生から5日後の2011年3月16日、ビデオメッセージを発表し、国難にあえぐ国民に優しく温かく、こう語りかけられた。未曽有の災害と福島第1原発事故を受け、被災者ばかりでなく国全体が途方に暮れ、絶望感にふさぎ込む中、国民を勇気づけられたこのメッセージは当時、大きな感動をもって受け止められた。宮内庁関係者が語る。

「これは、上皇陛下ご自身の発案によって発表されたものです。震災後、テレビで想像を絶する津波被害や原発の爆発、避難民の窮状を目の当たりにされ、『何かできることはないか』『何かせねばならない』とお考えになった末のことと伺っています。国と国民統合の象徴である天皇として、胸の奥から湧き上がる衝動のようなものに突き動かされてのことだったのでしょう」

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東日本大震災の直後に出た天皇ビデオメッセージ 2011年03月16日 ©︎時事通信社

政府関係者は「陛下はどうお考えなのか」

 現在、世界は、強い感染力を持ち治療法が分からない新型コロナウイルスの感染拡大という脅威にさいなまれている。日本にとっても震災以来となる、場合によってはそれをも上回る国難に直面していると言っていいだろう。政府関係者が語る。

「畏れ多いことではありますが、政府の中には、天皇陛下に国民を励ますメッセージを発していただきたいと考える者もいます。振り返れば、国民の緊張感はこの2カ月で一気に増しているからです。

 安倍(晋三)総理が2月26日にイベントの中止要請を行ったのを契機に、27日には総理が小中高の休校を要請。3月13日にコロナに起因する緊急事態宣言を可能にする改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が成立しました。4月7日に108兆円に及ぶ緊急経済対策を閣議決定するとともに『緊急事態宣言』を発令。16日には対象地域を全国に拡大することを正式に決めました。その宣言発令から21日でもう2週間が経ちました。陛下はどうお考えなのかとつい思ってしまうのです」

4月10日、専門家会議副座長の尾身茂氏(右)からの進講を受ける天皇皇后両陛下(宮内庁提供)