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キレる側なのに「被害者意識」 夫の「キレる癖」に妻はどう対処したか

『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』より #1

2020/05/07
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 夫婦で話し合いをしたくなくて会話を避けているという話もよく聞きます。

さるころ「でも、話し合いだって練習すればできるようになるものなんですよね。だから、次に結婚する人は話し合いができてタスクを明け渡せる人にしようと決めたんです。私は空手を16年やっているんですが、空手って物理的なコミュニケーションなんですよ。組手を見ると性格が見えてくる。夫はもともと仕事相手(野田さんが企画した『行くぞ! 30日間世界一周』にさるころさんが出演)だったのですが、離婚をして彼も空手を始めたんです。仕事だと立場が上だったのに、空手だと私のほうが先輩だから、突然従順な後輩になって。40を超えた男が女の話をちゃんと聞ける──それだけでひとつの才能。こいつは伸び代があるぜ! みたいな。相手の属性に関係なく、正しい言い分に耳を貸すことのできる人は伸びるじゃないですか。空手の型を見ても、真面目で素直な人だなってわかったんです。彼なら対等にやっていけると確信できました」

最初につくったルールは「察してちゃん」禁止

©iStock.com

 続いては夫の野田さんにお話を伺いました。まずは前の離婚の理由について。

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野田「いろいろまだ反省している最中ですし、こっちから見える風景と向こうから見える風景は違うと思いますが、やはりコミュニケーションがうまく取れないことが一番でした。僕は『夫(妻)たるもの、かくあるべし』みたいなポリシーは全然ないけれど、前の奥さんは、それがすごくある人だったんです。それにうまくハマればよかったんでしょうけど……。『もっと大黒柱として威厳を持って』とか『毎月まとまったお給料をもらってきて』と言われても、僕はそういう生き方をしてないし無理。家事育児には積極的に参加してましたが、そっちは求められていなかったみたいで。何か大きな原因があったわけではなく、そういったことの積み重ねだったんじゃないかな」

 相手に「かくあるべし」があると話し合いはかなり難しくなりそう。私もツイッターでたまに知らない人と議論をするけど(しなくていい)、お互い「かくあるべし」があると、納得のいく議論ができることはほぼ皆無。野田さんの言葉が染みます。

野田「そもそもコミュニケーションの取り方も違う感じがありました。僕はストレートに表現するし、元奥さんは本音をオブラートに包んで、相手の発言の含みを考える。だから、腹を割って話すのが難しかった。どうせ本当のことなんて言ってくれないだろうな、と」

 なるほど。夫婦でコミュニケーションの取り方について話しておくのは、結婚して最初にしておくべきことなのかも。

野田「さるころとは議論がちゃんと成立するんです。『行くぞ! 30日間世界一周』という僕が企画した番組で一緒に仕事をしていたのだけど、建設的なことを言えば取り入れてくれるし、『いや、それは違うだろ』みたいな反対意見もくれるので、新しい視点ももらえる。彼女は子どもを欲しがっていたのだけど、この人が子育てをしたら面白そうだなという感覚もありました。子どもに自分の思想を押し付けそうにないし」

©扶桑社

 結婚しなきゃいけないからする、ではなくてこの人といると面白そう。そう思える相手と一緒になれるのはすごく幸せなことじゃないだろうか。

野田「さるころと結婚して、最初にできたルールは『察してちゃん禁止』です。『察して』って、責任が発生しないぶん食い違いも生まれる。勝手に期待して裏切られたって思ってしまうし。例えば僕がイライラしているとき、彼女は『なんでイライラしてんの? それを言え』って言うんです。そう言われて、自分は『俺の怒りを察しろ』って無意識に振る舞ってたんだなって気づかされました。普通に考えれば、わかるわけねえだろって話じゃないですか。エスパーじゃないんだから」