4月17日、閣議のあとにおこなわれた記者会見で、文部科学大臣の萩生田光一氏は2020年秋ごろから始まる2021年度(来春)入学者の大学総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(旧推薦入試)について、その募集時期を遅らせる必要があるという見解を示した。

臨時休校について記者団の質問に答える萩生田光一文部科学相 ©︎時事通信社

この大混乱期に大学入試改革がおこなわれる

 理由は言うまでもない。新型コロナウイルス感染拡大の影響である。全国の高校の大半が休校をしているため、これらの入試選抜の評価指標に含まれる学校の出席日数が加算できないだけではなく、各種競技大会や文化活動が軒並み中止や延期となり、その個々の成果が計測できない事態になっているからだ。

 しかし、新型コロナ感染収束の目処が立っていないいま、2021年度の大学入試に挑む高校3年生と過年度生(浪人生)は言い知れぬ不安を抱えていることだろう。なぜか。そもそも現時点では入試が予定通りの時期に実施されるか分からない上に、2021年度からは大学入試改革の目玉である「大学入学共通テスト」がはじめて導入されるからだ。

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 大学入試センターは、現時点では2021年1月16日(土)・17日(日)にこのテストを実施するとしている。

大学入試改革の目玉は頓挫した

 大学入試改革をめぐる一連の混乱、迷走ぶりは皆さんもまだ記憶に新しいだろう。

 2021年度入学者から導入される「大学入学共通テスト」の内容は、従来の「知識・技能」を中心に測定する「大学入試センター試験」のあり方を疑い、それらの知識・技能を土台にした「思考力・判断力・表現力」、さらにそれらに基づいた「主体性・多様性・協働性」を持った人間形成をおこない、グローバル化や技術革新が進展する現代に対応できる人材育成につながるようにするというもの。

©iStock.com

 そのためのこのたびの大学入試改革の目玉は大きく2点。ひとつは「英語民間試験の活用」、もうひとつは「国語・数学の記述式問題導入」であった。

 しかし、前者の試験は1回あたりの受験料が高額であり、かつその実施会場が限られていることなどから、受験生の経済的・地理的な公平性を担保できないと判断され、見送られることになった。

 そして、後者については短期間で大量(50万人を超える受験生)の記述式答案を処理するのは困難であるとの結論に達した。アルバイトを採用するというプランに異論が噴出したことも手伝い、結局こちらも見送りに――。

 すなわち、2つの目玉が頓挫した何とも「宙ぶらりん」なものになってしまっている。そもそも、大学入試改革は制度設計がかなりずさんなものであり(見送りの理由を見ると、最初から容易に想像のつくものばかりだ)、その点を危ぶんで大学関係者や予備校講師、高校生たちまでもが反対し、昨秋は抗議デモもおこなわれた。その様子が新聞やテレビをにぎわした。この改革を断行できなかったのは、運動の力が働いたことも大きかったのだろう。