《第3位》シーズン4 ・14話 All That Glitters
一度別れてからよりを戻し、晴れて同棲生活を始めたキャリーと家具デザイナーの恋人エイダンだが、金曜の夜の過ごし方などに好みの違いが顕在化する。家でテレビでも見ながらケンタッキー食べて寛ぎたいカレと、街に繰り出したいワタシ。カレを誘い出すのを諦めて、女友達とつるんでゲイクラブに遊びに行ったり、そこで出会ったゲイのイケメンと流行りのエクスクルーシブなクラブに出かけたりしてお洒落で華やかな街を楽しむ。家に戻るとケンタッキーをくわえて居眠りするカレの非・お洒落と非・華やかな様子に落差を感じるものの、シングルで遊びまわっていた楽しい日々と、家で愛する人と過ごす日々の間でバランスを模索するというエピソード。
独身女たちが独身女であり続けるのには複合的な理由があって、恋愛がうまくいかないとか男を見る目がないとかそもそもモテないとかと並んで、このキラキラした街に繰り出す快楽にある程度見切りをつける潔さがないことも多い。そういう意味でも身につまされる話題ではあるのだが、何より、一度も街へサヨナラを言ったことがなかった私たちは今まさにおもわぬ形で街に別れを告げざるを得ない状況にあるわけで、眩いほど輝く街の記憶と、そこから一歩別の場所に歩き出すこのエピソードは、今の状況下ではより味わい深く、切なく感じる。
《第2位》シーズン6・16話 Out of the Frying Pan
主人公キャリーと恋人であるロシア人アーティストの初めての喧嘩が印象的なエピソードだが、それと同時に、彼女の友人で主要人物の一人である企業弁護士のミランダは、バーテンダーの旦那と犬猫赤ちゃんとの狭いマンハッタンのマンションでの暮らしに限界を感じ出して、当時はまだまだお洒落な地域ではなかったブルックリンへの引っ越しを検討する。マンハッタンを愛してやまない彼女も友人たちも、当時はその事実を受け入れられず、否定を繰り返すが、人生の新しいステージへうつるために、愛するマンハッタンからの移動を受け入れていく。
どんなに愛する街でも、しばしの別れをしなくてはいけないことがある。日本では、あの震災の被災地を離れなくてはいけなかった人も、一所懸命その街を取り戻そうとしているひともいるのに、私たちは実に東京の普遍性に寄り掛かっていたなぁと実感する。今、東京にいながらも東京から離れているような気分の毎日にぐっとくるエピソードだし、離れないで済むだけありがたいのかもしれない、とも思える。人の往来も少なく、ネオンもまばらで、いつもは欲望を刺激してやまないショウウィンドウの明かりも消えた東京を見て、そんなことを思った。