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連載テレビ健康診断

あえて深夜の2分半。名作の予感がする「きょうの猫村さん」――青木るえか「テレビ健康診断」

『きょうの猫村さん』(関西テレビ系)

2020/04/29

 ここのところ深夜帯のドラマにはいろいろなことを考えさせられていた。深夜ならではの原作、キャスト、音楽、そして深夜ならではの自由さ……。どれもよく似ているにもかかわらずデキに差が出る。

 ここ何年かの深夜ドラマでいちばんデキがよかったのは『きのう何食べた?』だと思うんですよ。まず原作が「うわーそこか、それでくるか!」という絶妙セレクト。主要登場人物のキャスティングが「なんでこんなにバッチリなんだ」ってぐらいマンガを再現しつつ、マンガと全然印象違う役者も「原作よりもっとしっくりくる」(ゲイ仲間の小日向=山本耕史とか)というのもすごい。

 おおかたの深夜ドラマは、「原作に表面的に近づけよう」か「意外性で驚かせよう」かで失敗する。その上、やっぱり脚本演出という、目立たないがものすごく重要な部分がイマイチであることが多く、「のた~っ」としたドラマ運びで眠くなるようなのが多い。『ひとりキャンプで食って寝る』とか。嫌いじゃないけどそれは「良いドラマだから」じゃなくて「ダメなとこもゆるく楽しんどきますか深夜だし」的な楽しみだ。

 そんな、玉石混淆深夜ドラマ界に『きょうの猫村さん』が来た!

 猫の家政婦が主人公の人気マンガを原作に持ってくる。家政婦っていうぐらいだからメス猫。それを演じますのは松重豊! これだけでもうおなかいっぱいであるが、脇を固めます家政婦紹介所の(以下すべて人間)石田ひかりや市川実日子、さらにこれから松尾スズキやら安藤サクラまで出てくるというではないか。

松重豊 ©文藝春秋

 私は原作の『きょうの猫村さん』をそんなに好きではない。あの絵柄がどうにも好きになれない。性格やたたずまいで人気出るのはわかるんだけど、どうしても猫に見えず「あんなん猫じゃねえぞ!」と思っていた。その「猫じゃなさ」を、猫の着ぐるみ姿の松重豊が絶妙に再現していて「やられた」というか、「これは深夜ドラマの中でも相当な実力の持ち主が結集しているのでは……そして名作となってしまうのでは」と思わせた。

 駄作見せられるよりはいいが、『猫村さん』をあまり好きじゃない自分としてはそれもまた業腹というか、いろいろめんどくさい心を持て余しつつ、ダメなところはきっちり指摘だ! と待ち構えていたら、なんと2分半で終わった。一回が2分半の連続ドラマ。こんなに短かったらボロが出る隙もないよ!(2分半なのにきっちり手間も金もかけてつくってあったし)

 そのあたりの「超人気ほのぼのマンガをあえて今、深夜2分半で」という抜け目のなさも含めて、ものすごく原作をうまく実写化している。今、誰にも批判されることのない無敵のドラマ。

INFORMATION

『きょうの猫村さん』
テレビ東京系 水 24:52~
https://www.tv-tokyo.co.jp/kyouno_nekomurasan/

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