32歳で漫画家を引退……今回の企画に繋がるまで
樹村みのりさんの元でもアシスタントを務めた。『40-0(フォーティーラブ)』という作品は、12歳の少女がレイプされても自暴自棄にならず、貧しい中でも誇りを失わずに学び、成長していく物語だ。
「この作品は時代を超えて訴えてくるものがあります。一番苦労したのは、冒頭1コマ目の列車です。部品が多くて、線が1ミリでもずれると、部品同士がかみ合わなくなるのです。何度も描き直し、時間がかかって、先生に迷惑をかけてしまいました」
笹生さんは故・三原順さんの大人気シリーズ『はみだしっ子』も1作手伝った。本書に描かれた、親を捨てて4人で暮らす少年、グレアム、アンジー、サーニン、マックスの性格が入れ替わり立ち替わり三原さんの表情や言葉にあらわれてくるシーンは、創作現場の臨場感に溢れる。この作品は、ネグレクト、虐待など今なお生々しい問題を扱っているが、子供を傷つけてしまう大人側の苦しさ、メンタルの崩壊などもしっかりと描かれており、驚くほど時代を先取りした作品であったことがわかる。
「私は子育てとの両立が難しく、32歳で漫画家を引退し、絵も全く描かない生活でした。40代の時、友人であり作品のファンでもあった三原さんの訃報に触れ、少部数の追悼誌を作りました。それは同人誌即売会とは無縁の本でしたが、三原順作品の復刊要望運動をする人たちと知り合うきっかけに。そこから同人誌活動を始め、即売会参加を続けていたら、今回の企画に繋がった訳なので、人生、何が起こるかわかりません」
さそうなみ/1955年、神奈川県生まれ。高校3年の時、「笹尾なおこ」名で「風に逢った日」でデビュー。「花とゆめ」「プリンセス」「月刊プレイコミック」「JOUR」などに作品発表。単行本は『25月病』。ここ20年ほど同人誌活動を続ける。