このような状況の中で中国を震源地とした新型肺炎の拡大は韓国経済にとって大きな痛手に違いない。
ムーディーズは、3月6日に発行した報告書で、韓国の今年の実質経済成長率を既存の1.9%から1.4%に0.5ポイント引き下げた。さらに、新型コロナウイルスにより広範囲で長期的な不況が続いた場合、韓国の今年の経済成長率は0.8%まで急落する可能性があると見通した。また、スタンダード&プアーズも3月23日に発表した報告書で、今年の経済成長率がマイナス0.6%まで落ち込むと予想。IMFも4月14日に今年の韓国の経済成長率の見通しをマイナス1.2%へと下方修正した。
このように海外の信用格付会社やIMFが韓国の経済成長率の見通しを大きく引き下げたのは、韓国経済が内需より交易や輸出に大きく依存していることと、主な交易相手である中国やアメリカを含む世界経済が新型コロナウイルスの影響により大きく減速する可能性が高いからだろう。
韓国における2018年時点の貿易依存度(GDPに対する貿易額の比率)と輸出依存度(GDPに対する輸出額の比率)は、それぞれ66.25%と35.15%で、日本の28.18%と14.37%を大きく上回っている。
さらに、韓国経済は中国への依存度が高く、2019年基準で輸出額の25.1%、輸入額の21.3%を中国が占めており、2位のアメリカ(輸出13.5%、輸入12.3%)と大きな差が出ている。サプライチェーンが一国に偏りすぎると、何か問題が発生した際のリスクが大きい。今回も新型コロナウイルスの影響で中国から部品が供給されず、多くの工場が生産を中断するなど被害が拡大している。
文政権の経済対策は何が問題か
では、韓国国内の経済政策はどうなっているのか。文在寅政権の経済政策の柱は、所得主導成長、公正経済、革新成長であり、この中でも所得主導成長が重視されてきた。所得主導成長とは、家計の所得を増やすことにより消費を増やし、経済を成長させる政策である。
文在寅政権は、所得主導成長政策の一環として、所得不平等を解消し家計の所得を増やすために最低賃金を大幅に引き上げる政策を行った。しかしながら、最低賃金を2年間で29%も引き上げた結果、経営体力の弱い自営業者は、人件費負担増に耐えかねて雇用者を減らした。
また、一部のコンビニや食堂では週休手当が発生しないようにアルバイトの時間を週15時間未満に制限した。最低賃金の引き上げにより一部の労働者の所得水準は改善されたものの、零細な自営業者や小規模な商工業者の経営状況はさらに厳しくなった。さらに、最低賃金未満の時給で働いている労働者の割合である未満率は15.5%まで上昇した。