その一つ目の理由は韓国の通貨がドルや円のような基軸通貨ではないからである。
アメリカや日本のような先進国は外貨が足りなくなった場合、量的緩和を実施し、通貨を発行することで外貨不足の問題を解決することができる。しかしながら、自国の通貨が基軸通貨ではない韓国のような新興国は、外貨が足りなくなると他の国から外貨を借りなければならない。
外貨が借りられないと通貨危機に直面することになる。1997年のアジア通貨危機がその良い例である。当時、韓国では、ウォンの急落により外貨で借りていた借金が膨らんだ。外貨準備高は39.4億ドルしかなく、海外からの資金は引きあげられ、外貨を借りることもできなかった。結局、韓国はIMFに緊急支援を要請することになった。
そして、二つ目の理由に、現在保有している外貨準備高が十分ではないと韓国政府が判断している点を挙げられる。
最近、韓国の学会で発表されたある論文では、韓国の外貨準備高の適正水準は、IMF基準を適用すると6810億ドル、BIS基準を適用すると8300億ドルであると推計されている。この推計結果と比べると韓国の外貨準備高は適正水準を大きく下回っているのだ。
IMF基準やBIS基準には短期対外債務額や外国人投資家の株式保有額などが含まれている。短期対外債務額は短期間に返済する必要があり、外国人投資家が保有している株式は、韓国の景気が悪くなるとすぐ売買され、資本が海外に流出する可能性が高い。
もちろんこの推計結果に反対する声も少なくないが、短期対外債務の対外貨準備高比は低下傾向だが、まだ3割以上(2019年32.9%)を占めている。また、外国人投資家の株式保有額は年々増加傾向にあり、外国人投資家の株式保有比率(金額基準)は2019年時点で33.3%に達しているのは事実である。
韓国政府にとっては、依然として通貨スワップに頼らざるを得ない状況なのだ。
高い貿易依存度という負担
さらに、今後の韓国経済に大きな影響を与えるのが、新型肺炎の感染拡大による輸出の減少だ。中国経済への貿易依存度が高い韓国経済にマイナスの影響を与えることは確かである。
昨年、韓国経済は米中貿易戦争の長期化の影響などを受け、輸出が減少し、年間経済成長率(実質)は2.0%に留まった。四半期別では2度も経済成長率がマイナスになった。
今年も米中貿易摩擦が続くと、韓国経済の回復は厳しいと予想されていた。しかしながら、1月15日にアメリカと中国が、貿易戦争の緊張緩和を目的とした合意文書に署名したことにより、韓国国内では景気底打ちへの期待感が高まっていた。