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新型コロナ不況が浮き彫りにした「韓国経済の最大の弱点」とは?

2020/05/02
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 今回、韓国政府がリーマンショック以来というアメリカとの「通貨スワップ」に動き出した理由は、新型コロナウイルスの影響によるウォン安ドル高の進行、株価の暴落等の金融市場の不安とドル資金の逼迫感を解消し、資金流出と通貨下落を防ぐためである。

 実際、韓国で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された1月20日には1ドル=1160ウォンであった為替レートは、米韓通貨スワップ前日の3月18日には1ドル=1261ウォンまで下落。さらに、2月までは2000を上回っていた株価指数(KOSPI)も3月19日には1458まで暴落していた。

韓国における新型コロナウイルス感染者発生前後の株価指数と為替レート(対ドル) (韓国取引所ホームページを用いて筆者作成)

 3月19日にアメリカと通貨スワップを締結してから金融市場に対する不安が解消された後、株価は少しずつ上昇し、ウォン安も止まるなど金融市場は安定化され始めた。

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韓国における外貨準備高の推移(韓国銀行「ECOS経済統計システム」を用いて筆者作成)

 また、アジア危機があった1997年末に89億ドルであった外貨準備高は2020年3月末時点には4002億ドルまで増加した。通貨スワップで確保したドルと外貨準備高の合計額はおよそ約6000億ドルに至った。

なぜさらに外貨準備高を増やしたいのか

韓国との通貨スワップに冷たい反応を示す麻生太郎副総理兼財務相 ©︎文藝春秋

 このように大きな改善が見られたものの、韓国政府はさらに外貨準備高を増やす政策を続けている。

 丁世均首相は今年の3月27日に開かれた記者懇談会で「(米国に続き)日本との通貨スワップも行われることが正しいと考える」と発言するなど再開に意欲を示した。

 一方、日本の麻生太郎副総理兼財務相は、韓国側から「協定の再開を要求する声があるが、どうする考えか」という質問に対し、「仮定の質問には答えられない」と冷たい対応に終始した。日本と韓国の間の通貨スワップは2001年7月に20億ドル規模で始まり、2011年には700億ドルまで徐々に拡大したが、2012年に韓国の李明博元大統領の竹島(韓国名:独島)上陸をきっかけに日韓関係が悪化したため2015年2月に終了していた。

 なぜ韓国政府は、そんな経緯のある日本との通貨スワップを持ち出してまで、外貨準備高を増やそうとしているのか?