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1人前の人として尊重しながらコミュニケーションをとるべき場合も

 また、「子どもだから」と決めつけずに、きちんと1人前の人として尊重しながらコミュニケーションをとるべき場合もあります。例えば、電話会議やテレビ会議などで集中して仕事にあたらなければいけない時間などに、子どもが話しかけてきたらどうするか。会議中は、どうしても子どもの相手をすることができません。冒頭でもお話ししましたが、子どもは親の関心を得られないと、かえって“構ってモード”に入ってしまいます。それを防ぐためには、実は一番効果があるのが「対話」と「約束」なんです。

 保育士を長年やってきて気づいたことですが、大きくなっても人の言葉に耳を傾けることをしようとしない子どもは、乳幼児期に親から「どうせ話しても分からないから」と、きちんと理由や状況を説明してもらえず、「子どもの気をそらす」ことでその場をしのいできたという環境で育ったケースに多いのです。

 決して、YouTubeやテレビを見せたり、お菓子で静かにしてもらうことが悪いというわけではありません。その前に、お子さんとの対話を挟めばいいんです。

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「お母さん、いま大事なことしないといけないから、時計の針がここからここに来るまで待っててくれる?」

「どうしても出なきゃいけない電話があるから、それが終わったら〇〇して遊ぼうね」

 このように、「対話」して「約束」することが大事なのです。そうはいっても、3歳くらいまでは、心が育つ大事な時期ですので大好きな人との関りを多く求めるのは当然です。そこは、できるだけ応じながら、本当にダメなときにきちんと話して協力してもらうということを根気よくです。ありがたいことに、子どもたちはそのような大人の姿勢をしっかり評価してくれる人たちです。

「ちょっと待ってて」は本当に手が離せないのか、自分の都合なのか

 実際に私のワークショップに参加した4歳の男の子をもつお母さんは、「実は、出がけに急いでいたので子どもに怒鳴ってしまったことを反省しました」と話し、帰宅したときに、

「今朝はごめんね。急いでたから、イヤな言い方しちゃったね」と子どもに話すと、「ぼくもごめんね」と、その時の自分の気持ちを話してくれて、仲直りができたと、後日、手紙をいただきました。

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 そして、「ちょっと待ってて」をついつい使ってしまいがちですが、それは、本当に手が離せないときなのか、自分の都合でやってしまいたいことなのか?と、自分に確認してみるとよいです。本当に手が離せないときは、理由をきちんと話し、本当に「ちょっと」で戻ること。自分の都合だなと感じたら、思い切って中断して、「なあに?」と子どもの要求に応じてみる。そんなことをしたら、いつでも求められて大変なことになる!と心配される大人が多いのですが、意外でしょうが、子どもたちは、自分のしたいことを中断してきてくれたということが分かっているので、そのあとに信じて待つという力も育つのです。そういった些細な日常の関わりの積み重ねが信頼関係につながり、大事な時の聞き分けの良さにつながっていきます。このような心掛けは、実は、大人の仕事の中でも同じではありませんか? テレワークの体験を通しながら、人間関係の修行も積めると考えると、なかなかいい感じではないですか?(笑)