この閉経への移行時期に自ら気がつく症状について、「これこそ更年期障害だ」と思うことが多い。ほてりやのぼせ、ホットフラッシュと呼ばれるものが典型的で、膣の乾燥感や性交痛もあるだろう。いずれも女性ホルモンの欠乏症状としてすぐ出現する症状だが、このような症状を一切感じず、知らずに更年期を過ごす女性もいる。この症状の有無の個人差についていうと、肥満気味の女性は有利である。なぜなら、脂肪組織は少量ながら女性ホルモンを作ることができる卵巣以外の唯一の組織であるからだ。脂肪組織は閉経後も女性ホルモンを作り続けるため、肥満気味の女性は急激な女性ホルモン低下とならないのである。
「更年期終わった!」の後にくる症状も
症状を自覚する人にとっても、ホットフラッシュなどの症状は一過性のことが多い。その一つの理由は、「慣れる」ということである。ヒトの適応力とはたいしたもので、ホルモンの変化は劇的であるのに、自覚的には「慣れてしまう」のだ。文献的には80%以上の女性が多かれ少なかれホットフラッシュを経験するとされるが、日本人ではもっと少ないとする説も根強い。
更年期というのはそれだけではなく、実は、女性ホルモン欠乏の影響は、もっといろいろと起こっている。その多くは、長期間をかけて慢性的に全身に影響を拡大する(上図参照)。
女性ホルモンは、全身にさまざまに重要な作用をし続けた。たとえば、膣などの湿潤や清浄度を保つ作用、皮膚や髪の毛などの保護作用などがある。閉経後、セックスに消極的になったり、膀胱炎を起こしやすくなったり、髪の毛が細くなる、生え際や分け目やつむじがはげて見えることを気にかける女性が多いが、これも女性ホルモンの低下により、女性ホルモンの重要な作用を得られなくなったが故の変化といえる。
上図を見ればわかるように、泌尿生殖器の症状、脂質異常や心血管系疾患、骨に関する症状は、多くの女性が「更年期終わったぞー!」と喜んで以降に始まる。しかも本人の何も知らぬ間に。なぜなら派手な自覚症状がないからだ。