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ダイエットの代償は骨塩量低めからのスタート

 閉経により無月経となると、女性の骨塩量はたちまち減少し始める。若いときにダイエットなどにより十分な骨塩の獲得をしていないと、さらに元々低いところからスタートすることになる。骨塩量の減少は、骨折につながり、高齢者では、特に腰椎圧迫骨折や大腿骨の骨折など長期間の運動制限を強いる状況、さらに寝たきりにつながり得る。

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 全身の骨と同じように、女性ホルモンの影響を強く受けるのが全身の血管である。閉経前後をきっかけに、血圧が上昇する女性が多い。女性ホルモンは、血管の柔らかさを保つ作用があり、これが血流を維持し、血圧の上昇をある程度防いでいる。したがって、閉経前の女性では、血液の流れが不足することが原因である狭心症や心筋梗塞に代表される心血管疾患の発生頻度は極めて低く、その頻度が急上昇する40代の男性とは対照的である。しかし閉経後はこの女性ホルモンの血管保護作用が失われるため、心血管疾患の頻度が急上昇すると考えられている。

 女性ホルモン欠乏が血中コレステロールに与える影響も重要である。大部分の女性で閉経後に血中コレステロールが上昇する。女性ホルモン欠乏により、脂質代謝が変化し、結果的に高コレステロール血症になるのである。

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「生理ちゃんその後」の50年をより豊かで若々しく

「痛いときには痛み止め」とか「熱があるときには熱さまし」という対症療法は、必ずしも馬鹿にしたものではない。これらは、短期的、急性期症状を解決して、生活の質を明らかに向上させるからだ。しかし、人生100年という長期的視点に立って「ひとのからだ」を考えるとき、医学的対応の戦略立案には、もう少し慎重で丁寧な対応を必要とするだろう。どのようなことがわかっているのか(エビデンスという言葉を使う)、また、わかっていないのか、特に利益と不利益の程度については、きちんと評価する必要がある。さらには、それぞれの方の「人生観」とか、「哲学」により、どのように対応するかなどの選択肢は変わり得るし、唯一の正解はないかもしれない。

 それでも、女性ホルモンが欠乏する閉経後に起こってくるさまざまな変化に対応する方法はあるのだから、知っておいていいだろう。前述のとおり、だいたい50歳を超えると「生理ちゃん」がやってこないのは今に始まった話ではない。変わったのは、その後の女性の人生が昔と比較すると極めて長期化して、もしかすると「生理ちゃん」がやってくる期間よりもさらに充実した人生となる可能性を持ったことだ。この「生理ちゃんその後」の50年の人生をより豊かで若々しく過ごすために。