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2020/05/05

source : 週刊文春WOMAN 2019年正月号

genre : ライフ, 医療, ヘルス, ライフスタイル

東京歯科大学市川総合病院の小川真里子医師

 閉経前後に起きるといわれる更年期症状としては、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、冷え、不眠、イライラなどの自律神経失調症状がよく知られている。だが実は、エストロゲンとは非常に強い抗酸化物質だ。女性の全身を病気から守ってくれているものといっていい。これがなくなることで骨や血管にも多大な影響が起こり、骨粗鬆症、脂質異常、血糖値上昇、動脈硬化などの生活習慣病や、腟炎、歯周病なども起こりやすくなるのだという。

 小川医師が強調する。

「老年期の病気を防ぐためにも、40、50代で不調があったら、婦人科医に相談し、自分の女性ホルモンの状態などを知っておくことが重要なのです」

【case 1】ホルモン補充療法 がんリスクは学会でも否定

 更年期症状の治療法として、最もよく知られているのが、ホルモン補充療法(HRT)だ。しかし、この治療法は普及しないことで知られていると言ってもいい。

 大きな原因は、2002年に新聞各紙が大きく取り上げた「HRTで乳がんが増える」という米国立衛生研究所(NIH)の臨床試験にまつわる報道である。当初は「HRTを5年以上投与した場合、乳がんリスクが1・26倍になる(日本女性にあてはめると1年間で1万人につき3人増加)」という数字が、行き過ぎた解釈となって広まった。

 しかし、そもそもこの臨床試験は、高齢・肥満・長い喫煙歴などの心疾患リスクを強く持つ女性に対して、HRTの有効性を調べるものだったのだ。このため、日本の更年期世代女性に即座にこの結果をあてはめることはできないという見解を、日本女性医学学会(当時は日本更年期医学会)でも出している。

 前出の小川医師が語る。「更年期だからといって誰でもがHRTを受ける必要はありませんが、症状のために日常生活がままならなかったり、仕事のパフォーマンス低下に悩んでいる方は、試してみる価値はあるといえます」

 ではどのように使うのか。

「エストロゲンは閉経の約2年前からじわじわと減少し始め、やがて閉経の半年ほど前からは、ジェットコースターのように急降下します。一方で、エストロゲンと反比例するのが卵胞刺激ホルモン(FSH)です。閉経の7~8年ほど前からじわじわと上昇していく。これは、分泌しにくくなったエストロゲン(卵胞)を刺激し、分泌を維持させる役割をするものです。ホルモン量を測ってFSHが上がってきていたら、月経不順やイライラ感など、何らかの症状が起きていてもおかしくはありません。

 この時期のホルモンは日内変動もあり、何度か測定しないと実態はつかみにくいのですが、閉経に伴う症状と診断できれば、HRTでコントロールすることができます」

 HRTは、体内で起きている女性ホルモンのゆらぎ、または枯渇した状態に対し、少量のエストロゲン製剤をプラスする治療法だ。エストロゲン値が上がることでFSHの上昇を抑えられるので、さまざまな症状を落ち着かせることができる。このとき、子宮がある人では子宮内膜の増殖を防ぐために黄体ホルモン製剤も使用する。