日本人女性の閉経の平均年齢は約50歳(日本女性医学会調べ)。その前後5年間(計10年間)を「更年期」ととらえ、その時期に起きる不調を「更年期症状」と呼ぶことは今や一般的だ。
しかし日本では、不調に悩みつつも更年期による影響だと気づかない女性も多い。また、「いい年齢をして産婦人科にかかるのは恥ずかしい」と医者にかからなかったり、あるいは積極的な治療を受けることへの抵抗感が強かったりして、治療を受ける女性はまだまだ少ない。
だが今、女性の更年期治療が変わってきている。更年期の症状は確実に「治せる」ものになってきているのだ。〈最新医療〉から〈健康食品〉、〈今すぐ試せる生活習慣〉まで、専門の医師たちが「更年期症状に効果があった」と、エビデンスをもって推奨する方法を紹介する。(全4回の最終回/#1、#2、#3)
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【case 4】閉経関連泌尿生殖器症候群 トイレの使い方で膣のかゆみが改善!?
50代を過ぎると、腟やその周辺のひりひりする乾燥感や痛み、かゆみ、性交痛などに悩む人は少なくない。「萎縮性腟炎」といってエストロゲン減少に伴う更年期症状の一つとされるものだ。
若い頃に比べると、残尿感や尿の切迫感も増えてくる。「自分の体が尿臭い気がする。漏れているのではないか」という声を聞くこともある。これは、お腹に力を入れたときにもれる「腹圧性尿失禁」や「膀胱炎」とは別物なのだが、自分では区別がつきにくい。
最近、これら腟と尿路の症状、痛み、かゆみ、においなども包括する概念として出てきたのが「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」という病名だ。この分野での治療・研究で名高い、三井記念病院産婦人科医長の中田真木氏が説明する。
「必ずしも閉経後だけでなく、閉経前の40代が感じる腟の乾燥感やかゆみも対象です。おりものシートをあててきつい着衣で締めつけていると若い年齢から変化は始まります。潜在的な患者は30代後半からいるとみられ、更年期から不具合が明らかになり、次第に治療しても治りにくくなっていきます」
GSMの中でも萎縮性腟炎は、前出の『ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版』でも「推奨度A」となっていて、早めに開始すればHRTがよく効くとされている。
また、「腟内へのレーザー療法」もメディアにはよく取り上げられ、話題だ。最も普及している「腟・外陰用フラクショナル炭酸ガスレーザー治療術(モナリザタッチ)」について、中田氏はこう語る。
「細いレーザー光を腟壁に瞬間的にあてていくことで腟壁の修復を促し、GSMの中でも特に性交痛を改善する効果が報告されています。効果は、膣の萎縮がどこまで進んでいるかによっても違いますが、照射条件など使い方が正しければ、安全面の問題はありません」