文春オンライン

わたしの「神回」

キムタクは父になる前からかっこよかった……「Cocomi、Kōki,に教えたい」出演ドラマ“3つの神回”

キムタクは父になる前からかっこよかった……「Cocomi、Kōki,に教えたい」出演ドラマ“3つの神回”

番外編は“あの伝説のコントバラエティ”

2020/05/07
note

その2)ラーメン屋でアルバイトする姿が…… 『若者のすべて』第2話

 そして『あすなろ白書』の翌年、同じ亀山千広プロデューサーと組んで、またしても男2番手で出演したのが『若者のすべて』だ。

 今やNHKの朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』『おひさま』『ひよっこ』と3作も手掛ける脚本家・岡田惠和の初のオリジナル作品での連続ドラマ。主題歌は、Mr.Childrenの「Tomorrow never knows」だった。

 ここで演じたのは、揺れる若者。おふたりが記憶されているドラマは、検事に医師に果ては総理に……と職業がはっきりしているものが多かったと思うが(ちなみにトレンディドラマの80年代後半から、恋愛ドラマが全盛だった90年代を経て、2000年代にお仕事ドラマが増えていったこと自体が2001年の『HERO』、すなわちお父様の功績です)90年代の木村拓哉は、不安定な揺れる若者も演じていた。かの『ロングバケーション』で演じた役もピアニストとはいえ、まだ音楽教室の先生で生計を立てていた。

ADVERTISEMENT

 職業がしっかりしている木村拓哉もいいが、未来が未確定な木村拓哉もいい。

『若者のすべて』はメインキャストに萩原聖人、武田真治、深津絵里、鈴木杏樹と当時を代表する布陣で、彼らが22歳の若者を演じている。(ちなみに、当時『恋しさと せつなさと 心強さと』を歌ってる人という印象だった篠原涼子や、『星の金貨』前の大沢たかおも脇を固めるなど、亀山プロデューサーの先見の明も光るキャスティングだ)

『若者のすべて』(DVDジャケット)

 実家の工場を継ぐ者、幾度も浪人しながら医学部受験を続ける者、就職する者、演劇の道に進もうとする者……徐々に人生の歩幅に差が生まれ始めた同級生たちの中で、木村拓哉が演じるのは友人の傷害事件を機に失踪してしまった男。夜はクラブ、昼はラーメン屋で働くフリーターである。

 注目すべきは第2話。ラーメン屋でアルバイトをする姿が描写されるのだが、それが社会に反抗しながら生活のために働いている若者然としていて、『グランメゾン東京』での料理人姿とはまた違った佇まい。

 そして、2020年の今見返して気づいたことがある。ラーメンを作りながら濡れた手の水をはじく姿。それが先日公開された、木村拓哉の自宅と思しき場所での手洗い動画を彷彿とさせるのである。丁寧に正しく手を洗ったかと思いきや、豪快に手を下に振り水を弾き飛ばす動画での姿は、確実にこの1994年の若者・木村拓哉の延長線上にあったのだ。

 

 2003年の『世界に一つだけの花』の大ヒット以降、国民的アイドル・SMAPは“正しいメッセージ”を発する役割を担わされてしまったが……実は今の素の木村拓哉はむしろ90年代に持ち合わせていた反骨精神を未だに持ち合わせていて、隠しているのではないか――。いや、そんなことはおふたりが一番知っているかもしれませんね。