韓国では新規の感染者数が減少したとして、5月6日からは外出自粛が緩和され、日常の中でのソーシャルディスタンシング(韓国では生活防疫と呼ばれ、人との間を両手を広げた間隔にすることや手を30秒以上洗うことなどが提示された)が始まった。
再び感染が広がることを憂慮する声も上がっていたが、5月6日、クラブから感染者が出た。二次感染者も含め14日までに133人の感染者が出るなど、新規の感染者数が再び増加に転じている(クラブ感染関連検査数は累積で3万5000件と発表)。
韓国ではこれまで徹底した行動経路の確認とPCR検査を進めてきたが、行動経路の確認の側面ではプライバシーの問題も浮上している。
韓国では、疾病管理本部(保健福祉部傘下の疾病管理に関連する研究開発を担う機関。「庁」へ昇格する予定。以下、KCDC)を中心に新型コロナ対策が進められてきた。前疾病管理本部長(2016年2月~2017年7月)の鄭錡碩(チョン・キソク)現ハリム大学医療院教授に、これまでの韓国の防疫体制、そして、今回のクラブでの感染者増加などについて話を聞いた。
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迅速なPCR検査体制の拡充に役に立ったこと
──「生活防疫」に転換した直後、「クラブ」から感染者が出て、新規の感染者数が再び増加しています。これは後述していただくことにして、まず、韓国で大量のPCR検査が可能だった背景には何があったのでしょうか。
鄭錡碩教授(以下、鄭) 韓国は2015年にMERS(中東呼吸器症候群)を経験した後、PCR検査の技術が向上しました。大田市には国立大学のKAIST(韓国最高峰の理系大学)を含めバイオ関連の研究所が集まる「大徳研究団地」がありますが、ここを中心に優れたPCR検査が開発されました。
PCR検査は、簡単に言えばウイルスの遺伝子の欠片を探しだす検査です。当初、中国の武漢で新型ウイルス感染症が発生した際に、中国はその詳細を公開しませんでした。しかし、どうもコロナウイルスのようだと判断し、1月初め頃、KCDC内の感染病診断管理センターはまず汎コロナウイルスを探し出せる検査を作りました。
その検査を便宜的にここでは「汎コロナ検査」と呼びますが、韓国で最初の新型コロナウイルスの感染者がでた時(1月20日)にはこの検査を実施しました。