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2020/05/23

genre : ライフ, 社会

その家で一泊。そして夜になると……

 靴を脱いで部屋にあがると、1階には事務机が何個も置かれていて、その上には埃を被った書類が山積みになっていた。奥には6帖ほどの和室があり、その先に庭が見えた。庭には大きな樹が植えてあったが、既に枯れていた。それが何とも不気味だった。

 そしてTさんは2階に上がり、夜を待った。夏場だったので寒くはなかった。しかし、暗くなってしばらくしても、“生首男”は一向に出てこない。数分置きに1階に降りて、庭を確認したり階段で待ったりしていたが、結局何も起きないまま朝を迎えてしまった。

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 朝になると、約束通りY社長が迎えに来てくれた。「何も出ませんでした。残念です」。Tさんはがっかりした思いを抱えながら、すぐに仕事もあったので、その日のうちに関西へと帰っていった。

両親の騒ぐ声で目を覚ました

 当時、Tさんは両親と一緒に、3人で暮らしていた。一軒家に泊まってから数日後。関西の自宅で、Tさんは両親が騒ぎだす声で目を覚ました。何事かと思いながら、2階の部屋から降りていくと、なぜかトイレのマットが血だらけになっているのだという。

 見てみると、確かにマットに真っ赤な染みがついている。しかし、両親とも特に怪我はしていない。Tさんは自分の身体を確かめたが、もちろん怪我はしていないし、そもそも昨日の夜からトイレにも行っていなかった。

実際のマット。真っ赤な染みがついている(Tさん提供)

 3人とも身に覚えがなく、謎は解決しないままだったが、Tさんの母がとりあえずマットを捨てて、話は終わった。その日、Tさんは仕事が休みだったため、2階の自室に戻ってもう一度眠りについた。

 Tさんが再び目を覚ましたのは、お昼頃だった。だるい身体を起こして1階に下りていくと、今度は父と母がぶつぶつ言いながら、リビングの床を一心不乱に拭いていた。どうしたのかと尋ねると、「何かが這った後があるねん、部屋中に」と言って、2人は床を指差した。