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2020/05/23

genre : ライフ, 社会

ナメクジが這ったような赤黒い跡

 そこには、赤黒い液体が渇いた跡があった。それはナメクジが這ったように、歪な線となって部屋中に残されていた。それを見て、Tさんの頭によぎったのは、あの一軒家のことだった。「いや、まさか……。こんな事って……」と思った瞬間――。

「お前が悪いんや、お前が悪いんや、お前が悪いんや……。お前のうえ、お前のうえ、うえ、うえ、うえ、うえ……」

 両親がそう言いながら、Tさんの頭上を指差した。突然の出来事に恐怖を覚えながら、Tさんがゆっくりと天井を見上げると――。真上から、真っ赤な目を見開いたどす黒い顔の男が、じっとTさんを睨んでいた。あまりの衝撃に、Tさんは自分の意識が薄れていくのを感じた。

©iStock.com

悲劇の終わりは……

 次にTさんが目を覚ますと、そこはリビングだった。

 さきほどの出来事は、もしかして夢だったのか? それなら助かった……。安心して家の中を見渡すと、もうずいぶん時間が経ったらしく、Tさんの母は台所で夕飯の支度をしていた。

「もうすぐご飯できるからね」

 Tさんの母は背中越しにそう言うと、くるりと振り返り、Tさんを見つめた。そして声には出さずに、口だけを動かして、確かにこう言った――。

「お  ま  え  が  わ  る  い  ん  や」

 その後、Tさんは近所の神社にお願いしてお祓いを受けた。幸い、それ以来自宅では、奇妙なことは起こらなくなったという。

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