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「日本のそば自給率はわずか20%。それを変えたい」 秦野に“奇跡のそば畑”をつくった男とは

2020/06/09

 「丹沢そば本店」は手軽な価格で十割そばが食べられることで有名である。しかも、そのそば粉はほぼ秦野産だ。待つこと5分、「大和芋のつけとろろそば」が到着した。そばをひとくち食べてみる。十分に冷やされた中太のそばはコシが強く、やや甘みが感じられ風味がよい。しかし、これが十割そばだとは少し驚いた。大和芋も相当な粘りがあり、そばにからめるとたまらない。

「大和芋のつけとろろそば」(1100円)が登場。大和芋もすごい粘り
冷やされた中太の十割そばはコシが強く、甘みが感じられ風味がよい

工場から数分で麺が届く「太打ち田舎そば」(1000円)

 その後、「太打ち田舎そば」(1000円)を追加で頼むと、お店の女性の方が売り切れたがいま製麺中なので製造工場に取りに行ってくれるという。なんともありがたいことである。数分後には食べることができた。

 その「太打ち田舎そば」は平打ちで十分に太い。1本箸でとって食べてみると、しなやかなコシとでもいえばいいのだろうか、つるっと食べやすい。しかも色が黒っぽくなく明るい麺線である。これもまた十割そばだというからさらに驚いた。

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 食べていると、店の奥にお店の関係者だろうか、元気な男性の声が聞こえてきた。町田からきたという先客の夫妻に声をかけ、味の感想などを聞いて、マシンガントークでお店をアピールしていた。実はその方が「丹沢そば本店」の代表取締役社長、石井勝孝さん(61歳)であった。ちなみに先ほど田舎そばを持ってきてくれた女性は、娘さんの石井絵里子さんだった。

「太打ち田舎そば」(1000円)は限定で相当うまい
「丹沢そば」社長の石井勝孝さんは豪快そのものだった
取材中、茶屋の「もりうどん」をいただいた。国産小麦のシコツルの細うどんもさわやかである

 食べ終わって、石井社長にお店のことを聞いてみることにしたのだが、石井社長は実はすごい人物だということがわかってきた。その取材内容は、1回の記事では書き尽くせない濃い世界を描き出しているように思えた。