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2020/06/15

 同様に一般誌の暴力団記事は、どの程度まで書けばいいのかさじ加減が難しい。差し障りのない記事→面白くない→仕事がこない。踏み込んだ記事→面白い→でもトラブルになったら仕事が来ない、となるからだ。例外は突出して硬派な記事だろうが、それだけの記事を記名で書く勇気と、書かせてもらえる信用を合わせ持っているのは溝口敦しかいない。

 実話系雑誌はもともと、誰もが面倒でさじを投げた部分を狙っている。最初からトラブルは覚悟の上だから、訂正文に対する抵抗が弱いのは当然だろうし、それを恥じる必要はないだろう。

言いなりのように掲載した訂正文

 私の最大の訂正文は、『実話時代』を辞めてフリーライターになった後、競合誌『実話時報』のグラビアページの巻頭に、3ヶ月連続で掲載された。記事はまるごとねつ造でしたと謝罪する文面で、訂正文を考えたのはクレームを入れてきた組織である。断言するが、暴力団専門誌が勝手に記事を作ることはない。なぜこんなことになったのか、いまでも真意が分からない。謝罪と訂正には慣れっこの自分だが、さすがに「ねつ造」は堪えた。マスコミ人としては最大の屈辱となる文言が並んでいて、相手組織からのファックスには、古巣の『実話時代』編集部の電話番号が記載されていた。もし『実話時代』が訂正文作りに関与していたとしたらさすがというしかない。実際、ここまで的確にウイークポイントを突いた訂正文は、同業者しか考えつかないだろう。『実話時代』と後発誌『実話時報』の確執については後述する。

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 このクレームによって、私は暴力団組織の役割分担を再確認した。トップに対する直接交渉のルートが遮断され、その意を汲んだ幹部たちが悪役を演じる。悔しさのあまり言葉が震える私に対し、幹部は「ねつ造といっても、いろいろあるんだからいい意味のねつ造と解釈すればいいんじゃない?」とせせら笑った。普段親しく交流していても、暴力団が本気で怒ったら、暴力に屈服するしか方法がないと理解した。