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「我々が取り締まっている組織こそ最強だ」と自負するマル暴刑事――ヤクザと関わる人々の特異な心理とは

「潜入ルポ ヤクザの修羅場」#6

2020/06/15
note

『実話時代』vs.『実話時報』

 暴力団をメインとして扱う雑誌は3誌ある。

『実話時代』は、暴力団専門誌の先駆けでありオピニオン誌だ。一部、時事ネタや情報ページもあるが、読者対策というよりは対外的なもので、具体的にはコンビニエンスストア対策と説明された。構成はまず、最低1本の現役暴力団組長、幹部のインタビュー取材を入れ、2、3本、現役暴力団組織エッセイを連載として載せる。それに暴力団を主人公とした実録小説を2本、元暴力団員の連載コラムを数本掲載するのが定型である。特集はもちろん、暴力団関連の内容である。テキ屋を特集したり、博徒を特集したり、暴力団の未来にスポットを当てたり、昭和の闇市のことを再検証したり、どちらにせよ、毎月ほとんどのページが暴力団社会の記事で埋まる。

暴力団をメインとして扱っている雑誌(筆者撮影)

ヤクザを対象にした星占い

 もともとは総合実話誌としてスタートしており、今の週刊誌同様、スキャンダルを中心とした芸能ネタ、スポーツネタ、政治ネタなどに、エロ記事とヤクザ記事を加えて一冊の雑誌を作っていた。創刊号からしばらくは試行錯誤を繰り返し、苦悩の跡がありありと分かる。ライバル誌との売り上げ合戦の中、当時、人気があったヤクザ記事に特化し、最終的に暴力団のみを扱う雑誌となった。当初は星占いでも「獅子座のみなさんは流れ弾に注意!」と、悪のりしていた。

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 エロ記事を排除したのは、特化した専門誌となっていく過程で、暴力団たちが嫌がったからという。自分たちのインタビューとエロ記事が隣同士に並ぶと、「あんなもんと一緒にしやがって」とクレームがくるのだ。

©iStock.com

 私が編集長をしていた頃は、とっくにエロ記事はなかった。しかし、実話誌だけに広告はダイヤルQ2など、ヌード写真を使ったものばかりだ。インタビュー記事の真横に、きわどいヌード写真の広告があると、当事者から「一緒にされたくない」と怒られた。広告ページの置き場所には細心の注意を払った。