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「今度逃げたら、お父さんのところに連れて行く」

〈「一応書いて。あんたが掃除しているときにお父さんを叩いて殺したやろ」などと申し向けながら白紙とペンを手渡し〉、清美さんが由紀夫さんを殺害したと自白する内容の「事実関係証明書」を書かせて署名・押印させ、もしまた逃げれば、これを祖父母に渡すと脅したのだった。そして「祖父母方に住んで仕事をしたいのなら大金を支払ってもらう」と、清美さんに、生活養育費として緒方から借用したという内容の2000万円の借用書を書かせ、署名・押印させた。そのうえで、「今度逃げたら、お父さんのところに連れて行く」や「いくら逃げても探し出し、見つけたら打ち殺す」などの脅し文句を続けたのだった。

 こうした脅迫の合間に、松永は清美さんの目の前で伯母の由美さんに電話をかけ、「清美は福岡の寮に送った」と嘘の説明をしている。また緒方は、清美さんが面接を受けていたアルバイト先に採用を断る電話をかけていた。

 松永による清美さんへの通電の暴力は、連れ戻された日の夜から始まった。その様子についても冒頭陳述では触れている。

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「ちゃんと話します。話を聞いてください」と哀願するも……

〈(松永は)被告人緒方に命じて、電気コードの電線に装着した金属製クリップを同被害者(清美さん)の右上腕部にガムテープで固定させるなどした上、その差込プラグをコンセントに差し込んで、同被害者の身体に通電させ始めた。

 被害者甲は、同6年(1994年)10月ころ片野マンションに転居して以降、被告人両名から同様の通電暴行を加えられ続け、通電により筋肉が痙攣する際の激しい痛みを経験させられ、その苦痛から、通電を予告されるだけで脇腹に激痛を走らせるなどの拒否反応を呈していたばかりか、同痙攣により通電された腕等が大きく跳ね上がることがあり、その際には、これに立腹した被告人松永から、更に長時間にわたって通電させられるなどされていた。

 そのため、被害者甲は、上記経緯で被告人緒方が電気コードを用意し始めた際、被告人松永に対し、「ちゃんと話します。話を聞いてください。」などと哀願しつつ、自己の左手を右上腕部に添えたりしながら必死に抵抗した。

 しかし、被告人松永が「電気を付けてから聞く。」と言うのみで、全く応じなかったことから観念し、被害者甲は、筋肉の痙攣により右腕が跳ね上がらないようにするため、その左手で右脇の下から右腕を強く握って固定し、通電に耐えるほかなかった〉

 このときの通電による暴行は、15日の午後11時頃から16日の日中まで延々と続いたという。さらにそれ以降も、連日のように通電を主とした暴行は繰り返された。