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BTSの“快挙”がK-POPの歴史を変えた! 知られざる「グラミー賞ノミネート」の本当の意味

『BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか』

2020/06/12
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K-POPの歴史において前例がない進歩

 グラミーはポップグループ、なかでもボーイズバンドを主要部門にノミネートした例がほとんどない、保守的なアワードだ。だがBTSは、主要部門や音楽ジャンルの部門ではないにせよ、音楽の美学に深く関わるデザイン部門で認められた。ある意味、それは変化が遅く保守的なグラミーが見せた、ささやかな賞賛のしるしかもしれない。グラミーの姿勢は消極的に感じられるが、これはK-POPの歴史において前例がなく、見逃せない進歩といえる。

グラミー賞授賞式(2019)で ©AFLO

 ひとつだけ付け加えたい。韓国ポピュラー音楽の価値は、アメリカの音楽産業に認められることによって、証明されるものではない。また、音楽が素晴らしいか否かは、賞によって決められるわけではない。アメリカを中心にすべてを判断する旧式の考え方も、いつか必ず克服されると信じている。

 しかし同時に、現実に目を向けることも大切だ。アメリカのレコード業界の威光はいまも絶対的で、世界中の音楽のトレンドを支配しているのは米国のポップスだ。また、限界は存在するものの、グラミーは権威あるアワードとして認められ続けている。これは、誰も否定できない。

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 そんななかBTSは、韓国ポピュラー音楽のミュージシャンとして、初めてグラミー賞にノミネートされた。それだけで、賞賛され認められるに十分値する。私たちが気づかないうちに、多くのことが変わりつつある。もちろんこの先にも、さらなる変化があるはずだ。(翻訳・桑畑優香)

BTSを読む なぜ世界を夢中にさせるのか

キム ヨンデ ,桑畑 優香

柏書房

2020年5月27日 発売

BTSの“快挙”がK-POPの歴史を変えた! 知られざる「グラミー賞ノミネート」の本当の意味

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