緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの流行についてはまだまだ厳戒態勢が続く。6月6日には、東京都の新型コロナウイルス感染者26人のうちで、12人が同じ店で働くホストだったことが報じられた。若者が多いなどのさまざまな理由から充分な感染防止策が取られず、可視化されにくいクラスター予備軍にどう向き合うかが、現在の課題となりつつある。

 私は5月下旬、コロナ流行下での北関東の在日外国人社会の実態を知るため、群馬県伊勢崎市の南アジア系のイスラム教徒や館林市の亡命ロヒンギャ人、大泉町のブラジル人などさまざまな在日外国人のコミュニティをのぞき見た。その取材を通じて痛感したのが、外国人労働者の間でのコロナ蔓延のリスクだった(詳しくは『文藝春秋』7月号掲載の記事をご覧いただきたい)。

 なかでもベトナム人の状況は深刻である。技能実習生や、主に就業を目的に来日した留学生(事実上の偽装留学生)、さらに技能実習先から逃亡した不法就労者は、いずれもベトナム人が最も多いとみられている。今回の原稿ではそんな事情をお伝えしよう。

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「明らかに普通の交通事故とは違う感じがありました」

 たとえば今年4月14日、ベトナム人不法滞在者A(逃亡した技能実習生とみられる)が群馬県玉村町で交通事故に遭い、搬送先の病院で肺に影が見つかったことで、新型コロナウイルス感染が明らかになる事件が起きた。

 結果、事件処理にあたった伊勢崎署員1人が濃厚接触者になり、他の署員も含めた計6人が自宅待機を余儀なくされた(後に陰性が判明)。また、Aが車にはねられた際に事故現場から立ち去ったもうひとりのベトナム人不法滞在者Bも、4月22日に群馬県警によって入管難民法違反(不法残留)の疑いで逮捕されている。BについてもPCR検査がおこなわれたが、さいわい陰性だった。

感染者と接触した署員が自宅待機を余儀なくされた伊勢崎署 ©AFLO
※Aが交通事故に遭った、群馬県玉村町大字下新田の交差点。Aは手前側の道路から飛び出した ©安田峰俊

「ベトナム人不法滞在者たちはコロナ感染については気にしていなくて、みんなで集まってお酒を飲んで踊ったりしている。事故当日のAたちも、コロナでヒマになったので、8~9人の仲間と集まっていたようなんです」

 Aと面識がある伊勢崎市内在住のベトナム人技能実習生のP(27歳女性)は、取材にこう証言している。また、事故発生当時に勤務中だったという、現場付近のコンビニエンスストアの店員は話す。

「歩行者が乗用車に接触しただけの事故で、重傷者も出なかったにもかかわらず、警察が大勢集まっていたのが印象的でした。事故後、パトカーや覆面パトカーが何台もやってきてうちの駐車場に停まったんです。事故について詳しいことは知りませんでしたが、明らかに普通の交通事故とは違う感じがありましたね」