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自殺未遂、父親のDV、兄からの暴力……コロナの今だからこそ家族に問う「本当にその人と一緒にいたいのか?」

著者は語る 『家族、捨ててもいいですか?』(小林エリコ 著)

『家族、捨ててもいいですか? 一緒に生きていく人は自分で決める』(小林エリコ 著)大和書房

 ブラック企業に勤務して自殺未遂、生活保護を経験後、自立。その過程を綴ったエッセイ『この地獄を生きるのだ』が注目を浴びた小林エリコさんが、自身の家族に焦点を当てたエッセイを上梓した。

「これまで書いてきた本は、精神障害や社会福祉、いじめ問題といったことが主な内容だったんですが、時々、家族のことも書いていました。それを読んだ編集者に、小林さんの父親の話が面白いです、と言われて、これまでのテーマから離れて、家族というものに向き合ってみよう、と思いました。一般的には、家族は一つ屋根の下で生活を共にすることが幸せだ、と思われていますよね。でも、果たして本当にそうなのか? と、長年思ってきたんです」

 小林さんの育った家庭は、いわゆる機能不全家族だった。父親は会社員で、毎月それなりの給料を稼いでいるものの、家庭では妻に暴力をふるい、酒と女遊びが激しく、それに耐える母親は、子供たちに関心がなかった。小林さんは兄による暴力を受けていた。

「いま、新型コロナウイルス問題のために、家にいなくてはならないですよね。当時の自分のように、家にいたくないのに逃げ場がなく、苦しい思いをしている子供たちも多いだろうと思います。外出自粛が始まって以来、世界的にもDVや虐待の件数が増えていますが、家族が家族の問題を放置してきた結果なのではないか、と思います。〈お父さんは家族に手をあげるけど、優しいところもあるから仕方ない〉みたいな。辛いこと、面倒くさいことには向き合いたくないもの。でも、夫や親の暴力やモラハラは、我慢するものではありません。この機会に、一緒にいたくない人と一緒にい続けることが幸せなのか? ということを考えて、離婚したい人はなるべく離婚した方がいいと思います」

小林エリコさん

 本の中で小林さんは、「母より父の方が好きだった」と書いている。

「子どもって、かまってくれる人が好きなんですよね。母は私に無関心だったけど、父は週末に映画や競馬に連れて行ってくれて、思い出が多いんです。また、家庭は家父長制のもとにあるから、父親が一番偉い。だからその顔色を見て、好かれなくちゃいけないと子どもながらに思っていた。けれども大人になって様々なことを学び、改めて考えれば、父はやはり最低でした。結局両親は離婚して、父とはもう付き合いがありません。でも、母には母の日にプレゼントをあげています。母が父と別居してから、こんなによく笑う人だったんだ、と気づきました。当時は子どもに優しくする精神的余裕がなかったんでしょう」

 エッセイでは、自身のパートナーにも言及している。

「子どもを持つことを考えていないので、事実婚でいいのでは、と考えています。相手が結婚に消極的であるのと、近代にできた日本の結婚制度は不備が多い。一度結婚してしまうと、稼ぎのない女性は立場が弱くなる。悩んでいる方がいたら、とりあえず貯金して、働いてみてほしいです。また、自分がそうだったからはっきり言えますが、一旦生活保護を受けてから、生活を立て直すのでも全然いいと思います。母親が父親に苦しめられている姿を見る方が、子どもにとっては経済的貧困より辛い。夫婦関係は対等なもの。頼みごとを心置きなく頼める関係か、話し合いができる関係か。他人と生きていくということは元々難しいものだから、家族という枠組みに凝り固まりすぎず、自分の心の声に耳を傾けてほしいです」

こばやしえりこ/1977年生まれ。短大卒業後、エロ漫画雑誌の編集に関わるも自殺を図り退職。精神障害者手帳を取得し、現在は通院しながらNPO法人で働く。著書に『この地獄を生きるのだ』『わたしはなにも悪くない』など。

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