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2020/06/20

「境田先生が出したこの判定に対して、今でも私は納得していません。現役選手の時間を台無しにする国際大会のエントリー漏れ(※)、明細すら出なかった遠征費の不明使用や恫喝のようなパワハラがあったにも関わらず、それらに一切触れずに予算が無いことが理由にされた。これでは問題がまったく解決に向かいません。

 予算の無い競技団体でもしっかりしているところはありますよ。私とヒアリングに参加した選手たちは、この判定に対してあり得ないと愕然としていました。選手たちは何のために勇気を出してヒアリングに臨んだのか……」
(※2018年8月のモスクワGPへのエントリー漏れ。選手3名のうち2名が事務手続きミスで大会に参加できないという協会側の不手際があった)

 この判定について、例えばTBSの『ひるおび!』で八代英輝弁護士は「これでは御用検証委員会の見解ではないか。ガバナンスやコンプライアンスに問題が無くてしっかり運営してきたというならば、金原さんが会長を辞めることは無いじゃないですか」と批判の声を上げている。

『検証委員会までが金原派やとは思わなかった』

 ここで当事者である選手の声を聞いてみたい。

 男子80キロ級代表の江畑秀範は“検証委員会がシロ判定を下した”ことを選手のLINEの連絡網で知ったという。

「勤めている会社にいたときに僕のスマホに次々に飛び込んで来たんです。すぐにヤフーニュースにも取り上げられたのを読んで愕然としました。現場の指導者の方も『検証委員会までが金原派やとは思わなかった』と嘆いていました。あまりのことに僕は境田さんに直接電話したんですよ。『先生、選手があれだけ必死になって話したのに、協会がガバナンスに違反していなかったとはどういうことですか?』と。そのとき先生は、『いや、違うんだ。あれは金原さんを抑えるためのパフォーマンスだったんだ。あそこで裁定をクロにしてしまうと高橋さんと岡本さんが責められてしまうのでああいう結果にしたんだ』ということでした」

男子80キロ級の江畑秀範 ©木村元彦

「強くなれたら100万円でもいいです」

 江畑自身はどのようなことをヒアリングで話したのか。

「僕は協会のお金にまつわることではなく、何よりも選手を取り巻く環境が崩壊していることが問題だという話をしました。選手から徴収された海外遠征費用が、何に使われたのか使途不明とか言うのは、確かに酷いことですが、現役の選手からしたら、経費のことは二の次なんですよ。国際大会に行くのに100万円かかるのか? 無料で行けるのか? そんなことよりも自分がその遠征で強くなれるのかどうかが重要なんです。強くなれたら100万円でもいいです。でも僕はあれでは強くなれない状態だということを話しました。

 2018年のモスクワGPのエントリー漏れは最たるものですが、強化合宿がまったく意味の無いメニューで組まれていたり、コーチに指導能力が無くて信頼関係が築けていないこと、あげればきりがありません。代表合宿に行っても意味が無いから、所属に残って練習したいという選手がほとんどで、だから、招集された28人の内、26人が行かないという事態に陥ったんです」

 当時、選手が代表合宿に行かないのは、強化体制への不満が理由ではないとも報道された。

「それは協会のパワハラが怖くて届け出に正直に書けなかったからです。体制を正面から批判すると強化指定選手を外されたり、除名処分を受けるんです。僕も抗議をしていたら、2014年から2019年までの間で2度ほど強化指定を外されました。だからみんな仕事が休めない、授業があるから、とか別の理由を書いて実質的なボイコットをしていたんです。僕はヒアリングでそのようなことを話しました。それは他の選手たちもそうです。怖かったですけど、必死に話しました。でも検証委員会がシロにしてしまったことで、僕らの訴えと言うのはすべて否定されてしまった思いです」