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金与正を評価していた友人に聞くと……

 このような怒りや失望は、私の周りからも耳にすることができた。その1人が、ソウル市内の大学で韓国文学を教えている大学講師の友人(39)だ。

 彼女は1カ月前、先の記事(「北朝鮮の“毒舌プリンセス”金与正はなぜ『韓国キム・ジヨン世代』に愛されるのか」)でも紹介した通り、北朝鮮と金与正氏について次のように高く評価していた。

「高慢な王女のような印象があるが、カメラに映る様々な姿を見ると、金正恩より開放的に見える。金与正が指導者になれば、北朝鮮を改革開放に導くことができるかもしれない」

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 しかし、今回の一件で、与正氏が常識の通じない相手だと失望したという。

「金正恩氏や与正氏が、どれだけ未熟で、戦略を持っていないかよく分かった。韓国政府がここまで誠意を見せて努力しているにもかかわらず、南北連絡事務所を爆破させ、過去の金正日政権のように、テーブルをひっくり返してしまった。結局、韓国国民に『北朝鮮は常識と忍耐が通じない国』という印象を与えてしまった」

 与正氏が連発した“言葉の爆弾”に、友人は裏切られてしまったのだ。

首脳会談のために訪れた文在寅大統領を平壌で出迎える金与正氏(2018年9月) ©AFLO

「与正氏は、行動力と推進力が優れている」

 与正氏の急変について、韓国の専門家はどのように見ているのか。韓国のシンクタンク「世宗研究院」北朝鮮研究センター長の鄭成長(チョン・ソンジャン)氏は、次のように分析する。

「金正恩委員長は、韓国人が好意を持っていた与正氏をあえて使って、韓国との関係を敵対的な関係に転換させながら、文在寅政権を脅している。

 そもそも正恩氏は対外関係において、経済的な成果を最も重要視している。南北首脳会談では『金剛山観光の再開』と『開城工業団地の再稼働』の成果が得られると考えて、外交の舞台に立った。しかし、会談から2年が過ぎても何の収穫も得られないと分かって、文在寅政権に対して『これ以上期待することはない』と判断したのだ。次の動きは、正恩氏が昨年10月に言及した『金剛山観光施設の撤去』だろう」

 その上で、与正氏について次のように説明する。

「長い間、対南問題の前面に立っていた金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長は現在、軍部を動かす立場におらず、北朝鮮のナンバー2とされてきた崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長も、対南問題と関わりがなく軍部にも縁がない。結局、正恩氏の代理人として、軍と党、そして北朝鮮住民を動かして、韓国を相手にできる人物は、金日成直系の子孫にあたる『白頭(ペクトゥ)血統』の与正氏しかいないと判断したのだ。