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国民の「北朝鮮への融和ムード」は激変した

 今回の爆破で、国民にも動揺が広がっている。爆破翌日の17日午後、大統領府で開催された外交安保の重鎮らとの午餐会では、文在寅大統領自らが、与正氏の過激な発言について取り上げ、次のように指摘した。

「国民たちが大きな衝撃を受けないかと憂慮される」

 文大統領の言葉通り、2週間以上続いている与正氏の“毒舌”によって、韓国国民の間でも、北朝鮮と南北関係に対する否定的な世論が日々高まっている。

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 それまで韓国では、国民の間でも北朝鮮に対する融和的なムードが大勢を占めていた。

 6月4日、与正氏が脱北団体の北朝鮮へのビラ散布を口実に、韓国を非難しはじめた時でさえ、韓国では北朝鮮へのビラ散布に反対する声の方が大きかったのだ。

平昌五輪のために韓国を訪問した金与正氏(2018年2月) ©AFLO

 韓国KBSの研究所が6月5日~9日まで全国の成人男女を対象に行った世論調査によると、北朝鮮へのビラ散布について「続けるべきだ」という意見が39.4%だったのに対し、「中断すべきだ」という意見は60.6%に達した。

 また、国連制裁に抵触しない事案なら南北間の交流協力を「推進すべき」という意見は69.6%で、「反対する」の29.4%を大きく上回り、南北間の交流が続けられるべきだという世論が優勢だった。

 しかし、与正氏の毒舌の激しさが増すにつれて、韓国内の世論も変化し始めた。

 ビッグデータ分析媒体の「ビクターニュース」は、韓国の2大ポータルサイトである「ネイバー(NAVER)」と「ダウム(DAUM)」に書き込まれた3月3日~6月14日までのコメントを用いて、北朝鮮に対する韓国人の世論推移を分析する記事(6月15日付)を掲載した。

 同記事によると、保守的な性向の強いネイバーはもとより、政権寄りで進歩的な性向の強いダウムの書き込みでも、連絡事務所爆破を予告した6月13日から、北朝鮮に対する強硬ムードが広がっているという。記事で紹介されたコメントは、冒頭で紹介した他にも、次のようなものがあった。

〈私は南北の和解と平和を祈っているが、北朝鮮のゴミみたいな行動には憤りがこみ上げる。(いいね! 130件)〉

〈よし! いつでもかかってこい。もう地球から永遠に消えるようにしてやるから。そうやって北朝鮮をやっつけて統一を成し遂げよう!! それから、その次に親日反民族の土着倭寇の番だ(いいね! 36件)〉

 同記事は、次のように分析している。

「13日に金与正が『次の段階の行動を取る。次回の対敵行動の行使権は軍隊総参謀部に移管する』と軍事行動に触れた時、ダウムのネットユーザーの世論も臨界点に達したように憤りが露わとなった。書き込み掲示板では、文在寅政府の支持者と思われるネットユーザーたちの北朝鮮に対する強硬なコメントが相次いだ」