福岡地裁小倉支部の第204号法廷では、3つの事件で起訴された松永太と緒方純子に対して、2番目と3番目の事件(監禁致傷及び、詐欺・強盗)についての冒頭陳述が続けられた(冒頭陳述の引用は〈 〉内に記載)。
なお、同事件の被害者である原武裕子さん(仮名=公判内では「被害者乙」と呼称)は、事件を思い出したことで重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、この公判が開かれているときは入院中だった。
裕子さんの夫は、被害者少女の父の同級生
裕子さんが松永と知り合ったのは1995年8月頃。裕子さんの夫が、監禁致傷の被害者である少女・広田清美さん(仮名)の父・広田由紀夫さん(仮名)と中高の同級生だったことから、由紀夫さんが松永を夫婦に紹介したのである。松永はそこで「村上博幸」との偽名を名乗っており、由紀夫さんは松永について次のように説明していた。
「村上さんは京都大学を卒業し、今は××塾(予備校名)の講師として月収100万円を得ているが、将来は物理学者になる逸材だ」
〈そして、被告人松永は、その後も、由紀夫や被害者甲(清美さん)を伴うなどして被害者乙方を訪問し、その際、同被害者に対し、手土産を持参したり、その服装や容姿を褒めちぎるなどして、如才無い好人物を演じ続けた。
その上で、被告人松永は、同年11月上旬ころ、被害者乙から夫の酒癖の悪さにつき愚痴をこぼされたことを巧みに利用し、同被害者に対し、「我慢する必要はない。離婚すればいい。」などと申し向けて離婚を促した〉
離婚を促し、デートに誘う
松永は裕子さんに対して好意を抱いているように装い、12月20日頃からは彼女をデートに誘うようになる。
〈デートの際には、同被害者に対し、「寺を借りて塾生を一定期間預かり集中講義をすると高収入が手に入る。」「同僚講師は、生徒の親から現金を賄賂のような形で受け取っているが、自分はそんなことはしない。」旨、さらに、電話では、同被害者に対し、「今、福井の寺で塾生の特訓中だ。休憩時間なので電話をかけている。」旨、その虚言癖による口から出任せの嘘を言い続け、上記詐称した経歴が真実であるかの如く装い、同被害者との交際を続けた〉