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求婚し、離婚届を提出させたうえ……

 また、初デートから間もない12月25日のクリスマスには、松永は裕子さんにペアウォッチを購入することを提案。互いに相手にプレゼントしていた。そして翌96年になると、松永はさらに積極的に、裕子さんへのアプローチを仕掛けていく。

 1月19日頃にドライブ中の車内で、松永は「結婚してください。一緒に住もう。子供さんの面倒は私がきちんと見ますから」と、裕子さんに求婚した。この時点で3人の子供がいた裕子さんは、夫と別れて松永を選ぶ決断を下す。そして彼女は2月に子供たちを伴って家を出ると、北九州市内の実家に身を寄せたのである。

※写真はイメージ ©︎iStock.com

〈被告人松永は、その後も引き続き、被害者乙に対し、「将来は小説家として成功したい。実家は広島の村上水軍の当主であるが、兄に継いでもらうつもりだし、実家の援助は受けたくない。」旨の虚言を申し向け、その将来性を期待した同女に、「いざとなったら自分が水商売のアルバイトをするから、お金のことは気にしなくて良い。」とまで言わせた上、同年4月26日、夫との離婚届を提出させた〉

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 松永は離婚した裕子さんに対し、「女性は離婚したら半年過ぎないと結婚できないから、その期間が過ぎたら入籍しよう」と口にして、彼女の結婚への期待を煽っていた。

「今産むと私生児になる」と堕胎させ、交際は口止め

 そうしたなか、5月になると裕子さんが松永の子を妊娠していることが判明する。そのことを彼女に告げられた松永は、「いま産むと私生児になる。今回だけは堕ろしてほしい」と言って堕胎させている。そして、「お互いの両親に紹介するまでは、付き合っていることは内緒にしていこう。きちんと籍を入れるまでは人に言わない方が良い。あなたのためにもその方が良い」とふたりの交際について口外しないよう命じ、後の犯行が発覚することを妨げるための予防線を張った。

※写真はイメージ ©︎iStock.com

 続いて、結婚後の新居として裕子さんに北九州市内のマンションを借りさせるなどしていた松永は、彼女により大きな結婚への期待を抱かせるため、「姉を紹介する」と言い、7月20日頃に、同市小倉南区にあるうどん店で、緒方を実姉として引き合わせた。

「森田です。弟のことをよろしくお願いします」

 そう言って「村上博幸」を名乗る松永の姉「森田」を装った緒方は、その日の夜に裕子さんに電話をかけ、「弟に電話番号を教えてもらった。今度子供を紹介する」と話している。ちなみに緒方は、その4カ月前である3月に松永の次男を出産しており、2児を抱える身だった。