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「おカネが必要だから用立てて欲しいんだけど」

 “姉”の登場で舞い上がる裕子さんに対し、松永と緒方が行動に出たのはその9日後のことだ。7月29日頃、先のうどん店にふたりで裕子さんを呼び出すと、松永は切り出した。

「自分は小説家としてやっていくつもりだ。一緒に住む家を探したり、当面、一緒に生活していくためのおカネが必要だから用立てて欲しいんだけど」

 そして松永は消費者金融数社のリストを書いた紙を見せながら言う。

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「こういうところがあるんだけど。借りてこいとは言わないけど、できれば借りてきて欲しいんだけど」

 そこに緒方が畳みかける。

〈同被害者に対し、「こういうことは全部、弟に任せとったらええんよ。心配はいらんから。」などと、言葉巧みに嘘を言い、同被害者に婚姻生活に必要な資金名目で現金を提供するよう要請し、同被害者をして同資金は真実被告人松永との婚姻生活に必要な資金であると誤信させてこれを承諾させ、被告人緒方が、同被害者をして消費者金融会社から借り入れさせた〉

※写真はイメージ ©︎iStock.com

 裕子さんが消費者金融で借りた現金のうち、7月30日に150万円、8月1日には100万円が、緒方に手渡されていたという。

新居を探し、賃貸を申し込み

 さらに松永は、裕子さんに対して「姉と仲良くなってもらいたいから、一緒にマンションを探して欲しい。広島の実家に近い新幹線沿いの新下関、小郡、徳山(いずれも山口県)付近で新居を探して欲しい。鉄筋造りの2階以上で、2DKの大きさの角部屋が良い」と頼んだ。そのため裕子さんは緒方とともに物件を探し歩くのだが、見つけた物件に対して松永はことごとく難癖を付け、なかなか決定しようとしない。

 9月13日になり、ようやく松永が了承したのは、最初に求めた山口県内の新幹線沿いにあるものではなく、北九州市小倉南区の物件だった。とはいえ、裕子さんはそこでの松永との新婚生活を期待して、『曽根アパート』(仮名)20×号室の賃貸の申し込みをした。

※写真はイメージ ©︎iStock.com

 それから10日後の23日には、松永はまたしても裕子さんに金策を願い出る。

「小説家としてやっていくので、当面の生活資金が足りない。まだおカネがいるので借りてくれないか」

 すでに250万円を松永らに提供していた裕子さんは、そこでさらに借金を重ね、翌24日に110万円を渡した。

 ここまでが、3番目の事件となる詐欺罪の犯行状況として検察側が挙げた内容だ。そこからは2番目の事件である、監禁致傷罪についての犯行状況が明かされていく。