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 もともとデビュー記念日の企画は、ファンをはじめ活動を支えてくれる人たちへ感謝の意を示すのが、いつものテーマだ。多くの人たちが、これまでのような形でエンターテインメントに触れる機会もままならない今、音楽を生業とするひとつのバンドができることは何か? やはり歌い、演奏して、その様子を見てもらって人に元気を出してもらうのがいちばんじゃないだろうか。桑田佳祐を中心としてメンバー、スタッフが話し合いを重ねるうち、そういう結論に達したのだった。

 しかも、だ。こんなご時世だからなおさら、感謝を伝えたい人がたくさんいるではないか。医療従事者をはじめエッセンシャルワーカーの人たち。私たちの暮らしを支え希望を保たせてくれた方々への感謝を、何かかたちにして示したい。

 

 そして、これまでサザンの活動を支えてくれたスタッフも。とりわけコンサートをつくり上げる仕事に携わる人々はここ数カ月、活躍の場を奪われたままである。ともに汗を流して舞台をつくり上げることで感謝を表せたらと考えた。

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無観客で、これまで通りのライブを

 ライブ敢行を決めたはいいが、もちろん壁はある。「緊急事態宣言」が解除されて、ようやくそろそろとエンターテインメント活動は再開され始めたとはいえ、「密」が発生しやすいコンサートは、大規模なものとなるとまだまだ開催の目処が立たない状況だ。

 ならばと、無観客でライブをしてその様子をインターネット配信するかたちで準備が進められることに。スタジオで演奏するさまを配信することは各ジャンルのミュージシャンが取り組み始めているが、ふだんと変わらぬ規模で無観客ライブをする試みは未だない。

 この時点で6月25日までは約1カ月となっていたが、そこからスタッフがフル稼働。「withコロナ」の音楽活動の可能性を探り、新しい「型」を創り出そうと準備が進められた。

「サザンオールスターズ official」より

「これまで通りのライブを」という方針ゆえ、ライブ会場は横浜アリーナを使用することに。そこはサザンがこれも恒例の年越しライブを開いてきた地で、いわば彼らの「ホームグラウンド」。無観客であろうとも、最大キャパシティ1万7千人の大きな会場を稼働させてしまおうという一事をとっても、サザンとスタッフの本気度が知れる。