昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/06/28

genre : エンタメ, 音楽

「見えないけれど、みなさんの魂がここにあるの、わかりますよーっ」

 ライブ当日である。サザンがライブをする際のスタッフ人員は、およそ400人に及ぶ。サザンは昨年ロングランのライブツアーをしており、スタッフのチームワークは高度に出来上がっていた。今回のライブもツアー時と同じ演者、スタッフが集められたのは、「スタッフへの感謝」もライブの大事な題目であることを考えれば当然だ。ライブ開始の何時間も前から、メンバーも楽屋入りを済ませていたようだ。アリーナ入場時には、スタッフはもちろんメンバーも全員が検温と手指の消毒を受けた。マスク着用も徹底され、リハーサルまでは激しい動きをするダンサーまでがマスク姿のまま踊ったという。

「サザンオールスターズ official」より

 インターネット視聴をする画面では、ステージにサザンのメンバーが揃って登場した。手を振りながら、まるで満員の観客を目の前にしているようなふるまいだった。

 最初の曲、「YOU」が始まった。曲のサビで「ユー!」と歌いながら、桑田佳祐は撮影カメラを指差した。「あなたへ向けて歌っていますよ」と強調するようにして。

 無観客ではあっても、聴いてくれる人あってのライブなのは当然のこと。一体感と連帯感は繰り返しアピールされた。「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」「希望の轍」を続けて歌い終えたあとのMCで桑田は、

「見えないけれど、みなさんの魂がここにあるの、わかりますよーっ」

 と空っぽの客席に語りかけた。

 その後も「フリフリ'65」「海」「シャ・ラ・ラ」など懐かしい名曲が続き、メンバー紹介もしっかりと行われた。まったくいつも通りにステージは進み、舞台演出にも一切の妥協はない。そこまでしなくても……と思うほど、会場の隅々まで色とりどりのライトが飛び交い、空間全体の盛り上がりが醸成されていく。

 

「真夏の果実」では、会場がオレンジ色の光に包まれた。サザンのライブで観客に配られ手首に巻かれるバンドライトが、すべての客席に仕込まれていて、一斉に光を放つようプログラミングされていたのだ。歌のイメージと相まって甘酸っぱい幻想的な光景が浮かび上がったのは、配信の映像を通しても感じ取れた。

「東京VICTORY」が始まると、客席中央には巨大な聖火台が登場し、火が灯された。これは聖火か、はたまた、コロナ禍の時代を少しでも鎮めたいという祈りの灯火か。客席が空いていることを逆手にとった、大胆で美しい演出だ。