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「タンタンは日本一やと思う」まもなく帰国の神戸のアイドル・タンタンと飼育員の絆

神戸市立王子動物園で過ごしたタンタン20年間の物語 #1

2020/07/05
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飼育員さんとの絆

 ホームページの「タンタンの履歴書」には、タンタンが得意なこととして「ハズバンダリートレーニング」と書いてある。ハズバンダリートレーニングは、日本語に訳すと「受診動作訓練」。健康診断の採血や検温、投薬などをストレスなく行うため、自主的に手足を出すなどの動作を、覚えさせるための訓練のことを指す。

「ハズバンダリートレーニングは、性格や環境によって、向き不向きがあります。タンタンには、資質があると思う」と梅元さん。「そこを伸ばしていったのが、歴代の飼育員さんたちです。さらにぼくらが実際に中国に行って学び、健康診断でも使えるレベルまで、訓練してきたんです」(梅元さん)

ハズバンダリートレーニングの様子


「最初は、採血するのにも苦労したよね」と梅元さん。吉田さんも「アドベンチャーワールドのハチミツで気を引く間に採血するヤツ、すごいよね。でもタンタンはハチミツが好きじゃないから」と話す。

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「タンタンはすごく頭がいいと思う。トレーニングでも、ぼくらが『こうしたら、こうしてくれるんちゃうかな』と、思う通りに動いてくれる」と吉田さん。

 梅元さんも「うちはこの子だけなので、お世話に集中できるというのもあるけど、トレーニングがうまくいってるのは、タンタンの資質も大きいと思ってます。個人的には、タンタンは日本一やと思ってますよ」と笑う。2人とも、タンタンがかわいくて仕方ない様子だ。

「タンタンが高齢なこともあって、検査や投薬をスムーズにできることは大事です。わからないことがあると、中国の人たちにやり方を聞いたりしていますね。最初は、自分たちで何とかしたいという意地があったけど、やはり向こうの技術はすごいですからね」(吉田さん)

 タンタンは頻繁に検査をするのだろうか?

前の班長が描いたパンダの絵。みんなパンダには、並々ならぬ思いがある ©二木繁美

「週に2回、エコー、血圧、聴診に歯や目の検査など、獣医師による健康診断を受けています。最初のうちは戸惑うこともありましたが、ハズバンダリートレーニングのおかげで、さほどストレスもなく、しっかりと健康管理できていますよ」(梅元さん)