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「タンタンは日本一やと思う」まもなく帰国の神戸のアイドル・タンタンと飼育員の絆

神戸市立王子動物園で過ごしたタンタン20年間の物語 #1

2020/07/05
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実はグルメなタンタン!

 現在24歳のタンタン。人間で言えば70代と高齢だが、食欲は衰えていない。しかも、めちゃくちゃグルメなのだという。

 前述の通り、多くのパンダが好きだというハチミツには、なぜか興味を示さないそう。「りんごの方が、圧倒的に好きだよね。仕方ないから、りんごにハチミツ塗って、そしたらやっと食べる感じ」(梅元さん)。香りの強いものが、好きだというタンタン。一番の好物は、ぶどうなのだという。

「気に入らない竹を食べないのは、当たり前。日常の光景です」と梅元さん。「同じ場所から、同じ人が持って来た竹でも、束によって全然食べない。毎週、好みが変わるんですよ」と吉田さんも笑う。

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竹を食べるタンタン ©二木繁美

「おいしそうに見える、緑の葉っぱは食べないんです。ちょっと古い黄色い感じの葉っぱが好きなんですよね。アドベンチャーワールドの永明さんも、そうだと聞いてます」と梅元さん。

 永明もかなりのグルメだというが、タンタンも負けてはいないようだ。

 園内にも、タンタンのために、竹を植えているのだという。「竹というよりは、タケノコを食べさせるために植えてるんです。老齢なので、歯の摩耗を防ぎたくて」と梅元さん。パンダは固い竹を食べるため、年を取ると、どうしても歯が摩耗してきてしまう。

「日本国内から中国まで探して手配して、園内にも植えて、年中タケノコを切らさないようにがんばっています。秋に採れるタケノコがあるんで、収穫が間に合えば、食べさせてあげたいな」と吉田さん。

タンタンさん、お顔に竹がついてますよ…… ©二木繁美

 これだけ、タンタンのことを思っているお二人。帰国の話を聞いて、どう思ったのだろうか。

「帰国の話は、全然予想していませんでしたね。今回も伸びると思っていた」と梅元さん。タンタンの帰国は過去に2回、5年ずつ延長されているのだ。

「ぼくも、まったく予想していなかった」と吉田さん。梅元さんも「さびしい。最後までめんどうをみる覚悟でいたし、みてあげたかった」と肩を落とす。

 吉田さんは「まだ日も決まっていないし、実感がわかない。でも、タンタンが行く予定の都江堰(とこうえん)基地は、ぼくも梅元君も行ったことがあるんですが、すごくいいところ。施設も設備も整っている。最後にパンダがたくさんいる故郷に帰るのが、タンタンにとっては、安心なのかなという気持ちもあります」と、複雑な胸の内を教えてくれた。

後ろ姿にも、ちょっと貫禄がでたように見える ©二木繁美

(続き「『震災復興と言えば、オリックスとタンタン』みんなに愛されたパンダの帰国、園長の思い」を読む)

「タンタンは日本一やと思う」まもなく帰国の神戸のアイドル・タンタンと飼育員の絆

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