6月3日、新型コロナウイルス感染拡大対策のため、50日間の休園を余儀なくされていた札幌市円山動物園が再開園した。屋外施設のみの公開ながら、初夏の日差しが降り注ぐ園内には、開園を待ち望んでいた人たちの歓声が響いた。

「あ、赤ちゃんもいる! かわいい」

「ほんとだ! 抱っこして見せにきてくれたね」

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 とりわけ親子連れを中心に人気を集めていたのが、ボルネオオランウータンの「レンボー(♀・21歳)」と、その子どもで2月に生まれたばかりの「レイト(♂・0歳)」だった。(全2回の1回目/#2に続く)

オランウータンの育児は24時間完全密着

休園中は「ちょっと退屈していた」動物たち

 筆者は休園中の5月初旬、「休園中の円山動物園で動物たちはどうしているのか」というテーマでレンボーとレイトを取材している(「札幌・円山動物園のいま 動物たちは人間が来なくて「ちょっと退屈」しているらしい」)。知能が高く好奇心旺盛な彼らは、いつもガラスの向こうから、来園者の様子を観察しているだけに、長い間、人間が誰も来ないという状況に「ちょっと退屈しているように見える」(加藤修・円山動物園園長)と心配する声もあった。オランウータンを担当としている李泳斉職員(40)は当時、取材に対して、こう語っている。

日光浴を堪能するライオンのリッキー

「(オランウータンたちは)やっぱりいつもと違うという違和感ははっきり感じているし、きっと不安もあるはずなんです。だけど彼らは状況の変化を受け入れて、それに対応して、生きているんですね。その点は、僕ら人間のほうが学ばされます。とにかく再び開園する日に向けて、今できる限りのことをちゃんとやって、あとは受け入れるしかないんだよな、って」

 オランウータンの親子は基本的に24時間文字通り密着して過ごすが、この休園期間中、レンボーはときどきレイトを自分の目の届く範囲で完全に自由にして、草の上で遊んだり、鉄柵につかまったりするのを見守るようになったという。

「レイトが単独性、樹上性をもつオランウータンとして生きていく準備を進めていたようです。開園直前には、レイトは鉄柵の一番上まで一人で上ったりして、レンボーの方も、コンディションを合わせてきた感じですね(笑)」(李職員)

赤ちゃんを抱えたまま軽々と登る

 円山動物園では、レンボーとオスの「弟路郎(23歳)」との間に、2010年に「ハヤト」(愛媛県・とべ動物園へ転出)、2016年に「ハルト」(8カ月後に死亡)が生まれており、「レイト」は“三男”ということになる。日本国内でもわずか33頭しかいない絶滅危惧種のボルネオオランウータンの飼育下での妊娠・出産に、順調に成功している背景には、人間とオランウータンとの「信頼の物語」が紡がれていた。