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夢は加藤一二三九段よりも長く現役生活を送ること

 高校3年生、学業か将棋か、選択のタイムリミットの時期に複数の出会いや再会がありました。その1つは今の夫でもあるのですが、どれもが私と将棋を繋ぎ、将棋の世界で生きる事を選ぶには十分でした。中学1年生でデビューし、高校3年生でようやくスタートライン。ずいぶん遠回りをしましたが、私にとっては「自分で選ぶ」ということが何よりも大事でした。自分で将棋を指して生きていくことを選んだのです。

 それから10年程して今に至ります。その間、女王のタイトルを獲得したり、失冠したり、女流棋士会の役員を務めたり、結婚したり、出産を2回したり、それはまぁ色々ありました。最近の一番の幸せはもうすぐ2歳の次女を抱っこしながら一緒にお昼寝をすることです。最高の癒し。ちなみに夢は加藤一二三九段の現役棋士生活よりも長く現役女流棋士生活を送ることです。あと何年?? 

夫の及川拓馬六段も将棋指し ©文藝春秋

 女流棋士生活も気がつけば来年で丸々20年。コラムと称して長々と自己紹介をする位には図太くなった訳ですが、そんな私が第2期ヒューリック杯清麗戦の挑戦権を獲得しました。我が家は(主に夫が)騒然。それもそのはずで1年も経たないほど最近まで、私はここ10年で一番と言っていいほどの不調だったのです。

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もうトーナメントプロの道には戻れないかも

 原因は2人育児に想定よりも時間と体力を持っていかれることでした。子どもが小さい間は、自分の時間というのは本当に限られます。更にその限られた時間に将棋の勉強をするためには、体力がなければいけません。文字だけでは伝わらないかもしれませんが、これは相当頑張らないと「将棋の勉強をやろう」という気力自体が湧かないのです。

一緒に遊ぶ4歳の長女ともうすぐ2歳になる次女 ©上田初美

 昨年度前半に負けが込みました。ある程度は仕方がないと覚悟はしていたのですが、負け方が思っていた以上にどんどんと酷くなっていきます。このままではもうトーナメントプロとしての道には戻れなくなるという不安も出てくる程、自分の将棋の状態が悪いことを自覚しました。