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藤井聡太七段と4日差 屋敷伸之九段が振り返る“17歳の挑戦”「キツかった和服と高校生活」

藤井聡太七段と4日差 屋敷伸之九段が振り返る“17歳の挑戦”「キツかった和服と高校生活」

“最年少タイトル”屋敷伸之九段インタビュー#1

2020/06/27

 高校3年生でタイトルに挑戦し、18歳でタイトルを手にした青年がいた。屋敷伸之――タイトル初挑戦は1989年後期棋聖戦で17歳10カ月24日、タイトル初獲得は1990年前期棋聖戦で18歳6カ月14日、タイトル初防衛は19歳0カ月7日だ。いずれも史上最年少記録だったが、今月6月8日にヒューリック杯棋聖戦で藤井聡太七段が渡辺明棋聖に挑戦し、タイトル初挑戦の記録は17歳10カ月20日に塗り替えられた。

 現在48歳の屋敷はタイトル獲得3期、棋戦優勝2回、竜王戦1組15期、順位戦A級6期の実績を誇る。現役生活は32年目を迎え、現在もトップ戦線でしのぎを削っている。いま10代でタイトル戦を戦ったこと、藤井聡太七段の登場をどう思うのだろうか。

【全2回/#2を読む

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18歳6カ月という最年少タイトル獲得記録を持つ屋敷伸之九段 ©山元茂樹/文藝春秋 

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「18歳でタイトル」――何歳のとき将棋を指し始めた?

――1988年10月、屋敷九段は高校2年生のときに16歳8カ月で四段になりましたが、奨励会をわずか2年10カ月で突破されたのもすごい記録です。将棋を覚えたのは何歳ごろでしょうか。

屋敷 小学校2、3年生のときで、父からルールだけ教わりました。のめり込んでいって、そのうち学校の先生と指したり、地元の北海道・札幌の将棋イベントに参加するようになりました。アマ初段になったのは3年生の終わりか4年の初めぐらいでしょうか。将棋を始めてから習い事はやらなくなりまして、学校から帰ったら詰将棋や将棋の本を読み、週末は将棋センターに通う日々でした。当時、札幌で一緒に指した子どもで棋士になったのは、野月浩貴八段、金沢孝史五段ですね。

――1983年の小学校6年生のとき、小学生名人戦で3位になります。

屋敷 前年の小学生名人戦はベスト8でした。勝っていれば優勝した羽生(善治)さんと当たっていましたが、ボロ負けだったでしょう(笑)。当時、羽生さんと決勝戦で戦ったのが同郷の方で、私より強くてアマ四段ぐらいでした。準決勝で森内(俊之)さんに勝っているんですけど、その方が羽生さんを「見たことがないぐらい強い」といっていましたから。

藤井聡太七段。先日の棋聖戦で、タイトル初挑戦の記録を17歳10カ月20日と塗り替えた。屋敷九段の記録との差はわずか4日間 ©文藝春秋

――屋敷九段が奨励会に入るのは1985年、中学校2年生の13歳で中学生名人戦を優勝してからです。小学生のときは奨励会を受けなかったのですか。