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屋敷 そうなんですか。何でしょうね(笑)。あまり人がやらない形を指していたので、そのあたりのことでしょう。塚田先生の相掛かりに近い作戦を指していたんですけど、自分の相掛かりはまたちょっと違っていたと思います。

――棋聖戦ではトーナメントを勝ち上がっていくにつれて、タイトル挑戦を意識しましたか?

屋敷 ないです。大きな舞台だなとは思いましたけど、相手が格上なのでぶつかっていくだけでした。それで、勝ちが運よく転がり込んできた感じでしたし。

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――挑戦者決定戦でもなかったんですか?

屋敷 いやー、高橋(道雄)先生ですからね。普通にやれば勝てないので、自分の力を出し切ろうと思っていました(※対局当時、高橋八段はすでにタイトル獲得5期、棋戦優勝2回のトップ棋士)。

42歳の中原誠棋聖を目の前にしたときの気持ちは?

――挑戦権を獲得してから2週間後、1989年12月12日に棋聖戦五番勝負が始まりました。このとき屋敷九段は17歳10か月で、高校3年生です。相手の中原誠棋聖は42歳で、王座も保持していました。当時のタイトル獲得は60期で、昭和から平成にかけて将棋界を引っ張った大棋士です。どういう気持ちで臨まれましたか。

十六世名人・永世十段・永世棋聖・永世王位・名誉王座、5つの永世称号を持つ大棋士・中原誠 ©文藝春秋

屋敷 緊張感はありましたが、タイトルを意識する気持ちはなかったです。いい将棋を指せればと思っていました。

――第1局を戦ってみてどうでしたか。

屋敷 いつもと舞台設定が違いましたけど、あんまり細かくは覚えていないです。中原先生は貫禄がすごいですし、緊迫感がありました。でも、将棋が始まってしまえばいつもと同じでした。

――第1局で屋敷四段の勝ち。白星スタートでした。

屋敷 順当にいけば1局入るかどうかだったと思いますので、初戦に勝ててホッとしました。

――第2、3局は連敗しましたが、第4局に勝ち、最終局にもつれ込みます。五番勝負を戦っていくうちに感じたことはありますか。