文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

育児疲れで「10年で一番の不調」だった女流棋士の私が復活するまで

育児疲れで「10年で一番の不調」だった女流棋士の私が復活するまで

この夏、タイトル戦の舞台で里見香奈清麗に挑む

2020/07/03
note

「何回倒れても立ち上がってくるゾンビみたいだね」

 いわゆる“寝ない子”である次女も1歳を過ぎて少しずつ寝てくれ始め、自分の時間を少し持てるようになったのと同時に、意識的に自分の将棋を戻すトレーニングを始めました。読む力が足りないなら詰将棋を、現代の感覚を養うためにソフト研究を取り入れるなど、自分を分析し、最も足りない部分から徹底的に埋めていく作業を続けました。私個人のnote(将棋から離れた頭をリハビリしていくお話し)に詳しく書いてあるので、ご興味があればぜひそちらも読んでください。

 少しずつ結果が出始めたのがこの半年程。まさかこんなに早く挑戦権を得られるとは、とても考えられないことです。2回の出産でそれぞれ約4ケ月ずつ休んでいますが、どちらも復帰してそれ程経たずタイトルへの挑戦権を得られました。「何回倒れても立ち上がってくるゾンビみたいだね」なんて夫と話していますが、よくよく考えるとゾンビって失礼じゃない? まぁでも不死鳥とかっていう柄でもないから、ゾンビでいいか(笑)。

里見香奈清麗は将棋に対して誠実な人

里見香奈さんと天童で人間将棋をした時のツーショット

 3年ぶりのタイトル戦、お相手は里見香奈清麗です。前回の産休後に挑戦したのは女流名人戦でやっぱり里見女流名人。里見さんとはこれで4回目のタイトル戦になります。2-3のフルセットが2回ありますが、タイトル戦をひとつの勝負と見れば一度も勝ったことがありません。当たり前ですが、強い人に3回勝つのは大変です(負けるのは簡単なのに)。今回も今まで以上に厳しい勝負が待っているのは間違いありません。ちなみに2回目の女流名人戦フルセットは女流棋界の中でトップクラスに質の高いシリーズだと思っています。女流名人戦中継ブログで見られますので、ご興味があればこちらもぜひ。

ADVERTISEMENT

 里見さんは感想戦以外であまりお話しをしたことがないのですが、将棋に対していつも誠実です。強さもですが、それよりもその誠実さやひたむきさを眩しく思います。里見さんを目標に、たくさんの人が上に引っ張ってもらっているでしょう。壁は分厚いのですが、それを気にしていても仕方ありません。まずは自分の全力を出し切れなければ勝負にならないのです。その結果として、良いシリーズになればいいなと思っています。清麗戦五番勝負は7月4日(土)に開幕します。ご観戦どうぞよろしくお願いいたします!

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。

育児疲れで「10年で一番の不調」だった女流棋士の私が復活するまで

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春将棋をフォロー