諦めそうになる度に、頭の中で「ミヒ」が悲しそうな顔をする
――90分を超えるアニメ作品を作るにはかなりのお金がかかります。
清水 資金を集めるために、企画書を作っていろいろなところを回りました。みんな「面白そうだね」と言ってくれるのですが、テーマが難しいのでなかなか踏ん切れない。
米国の制作会社が乗ってきたのですが、2014年、朝鮮労働党第一書記の金正恩氏を茶化したコメディー映画『ザ・インタビュー』の公開前に、配給元であるソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントに大規模なサイバー攻撃を仕掛けたある集団が劇場を脅迫して、公開が一時中止される騒ぎがあり(結局、一部の映画館で公開)、こちらの話も立ち消えになりました。
なんども諦めそうになったのですが、その度に、頭の中に「ミヒ」が出てきて、「なんで作ってくれないの?」「諦めちゃうの?」と悲しそうな顔をするんです。腹を括って自腹で制作することに決め、制作費を安くするためインドネシアでアニメ制作の会社を立ち上げました。アニメ専門学校を出たばかりの若いフリーランスのアニメーターを25人ほど集め、無料で使えるオープンソースのソフトウエアを駆使しました。結局、資金集めに2、3年、制作に6年近くかかりましたが、首都圏で一軒家が買えるくらいの借金ですみました。
いまは日本語の字幕を準備中
――公開の予定は決まっていますか?
清水 例年は映画祭に出品して、そこで各国の配給会社と交渉するのですが、今年は新型コロナウイルスの影響で映画祭が中止になったり、オンライン開催になったりしました。今、個別に配給元と交渉しているところです。日本の配給元2社からも問い合わせをもらっていますが、まずは日本語の字幕をつけて日本の映画祭に出展すべく準備中です。
おかげさまで映画業界誌『ハリウッド・レポーター』やアニメや、コミック・ブックの有力サイト『CBR.com(旧コミック・ブック・リソーシズ)』で高い評価を受けており、アメリカなどでの公開が先になるかもしれません。