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2000万円の予算はどこへ?

 初年度はフィリピンやグアムの慰霊ツアーが組まれました。ところが、その後まったく慰霊ツアーの話が聞こえなくなってしまったのです。 

 軍人軍属の遺族は約1万6千人います。一回のツアーに参加できるのはせいぜい20人ほど。遺族といえどもみな70代を超え高齢な方ばかりです。なるべく早急に慰霊をしたい、と願う人が多くいました。 

 真相糾明委員会に問い合わせると「予算がないから慰霊ツアーを実施できない」と言うのです。しかし日本政府からは2000万円の予算が付いているし、韓国政府からも資金が出ているはずなので解せない話です。 

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 私は旧知の李洛淵(イ・ナギョン、元首相)氏に相談することにしました。李洛淵氏は以前東亜日報に勤めており、アジア女性基金の取組みを好意的に記事にしてくれた韓国メディアでは数少ない記者の一人だったのです。その後、政治の道へ進み、当時は国会議員をしていました。 

 状況を説明するとこう言ってくれました。 

「韓日共同事業は大事です。私から真相糾明委員会に聞いてみましょう」 

 李洛淵氏が電話をすると真相糾明委員会の事務局長が飛んできました。 

李洛淵氏 ©getty

 後に聞いた話によると、真相糾明委員会は慰霊事業の予算を職員給与や他事業に流用し、食い潰していたというのです。 

 慰霊ツアーは遺族の悲願でした。真相糾明委員会の実被害者を蔑ろにするようなやりかたを聞き、私は呆れて物も言えませんでした。 

巻き上げられた名簿や資料は立派な建物へ

 真相糾明委員会が巻き上げた遺族会の名簿や資料の一部は、釜山近代歴史館に展示されています。建物は立派です。しかし、その展示内容は“空虚”の一言です。 

 私が訪れたときは、大量の遺族や被害者の写真が天井一面に貼られているスペースがありました。凝ったデザインではある。でも、その展示からは遺族の思いや人生が伝わって来ないのです。 

 ある遺族はこう嘆いていました。 

「ここは自分たちの記念館とはいえない。資料はあっても、被害者の心というものが感じられない」 

 私も、真相糾明委員会で働く市民活動家たちに“心”を感じることが出来ませんでした。