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脅威の正体を知りたい心理を利用する

 たとえば、地震やら伝染病やらがどういう原理で発生するのかわからない時代であれば、神の祟りや魔女のせいだと人々に思わせ、自分だけにそれに対処できる特殊な能力や権限を持っていると演出することで、都合よく人々を支配することが可能でしょう。

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 ここで重要なのは、大衆の無知と不安、恐怖心を利用すれば、実際には問題を解決する能力がなかったとしても、簡単に人々を支配できてしまうということです。そして、大衆が「わからない」状態から解放されてしまったら、その支配の魔法は解けてしまうということです。

 人間にとって一番怖いことは、自分にとって脅威となる対象について「何もわからない」という状態が続くことです。だからこそ、本能的にその空白を何かで埋めることで理解しようとします。空白を埋めるためであれば、それが真実でなくても構わないのです。地震が「神の祟り」によって引き起こされているという情報は誤りだとしても、人々はそのように理解することで安心するのです。何もわからない状態よりも不安は解消されるからです。

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「魔女狩り」と「発達障害」信仰

 さて、災難の鎮静化のために人身御供を差し出したり、疫病の流行を防ぐために魔女狩りを行ったりしていた過去の歴史を今の時代から振り返ると、あまりにも無知で野蛮で馬鹿げたことだと感じることでしょう。今の時代に生まれて良かったと思うことでしょう。しかし、これらと大して変わらない、本質的には同じ現象が今の時代にも変わらず起きていることに気付いている人はほとんどいません。後の時代の人々からすると、魔女狩りを過去の迷信だと嘲ける我々のことなど、鼻糞を笑っている目糞にしか映らないでしょう。その我々がはまりこんでいる現象こそが、昨今の異常な発達障害ブームです。

 大衆は、理解できない、理解したくない現象をすべて強引に発達障害に結び付けるようになっています。その背景には「無知」がありますが、そのさらに背後には、大衆に無知と誤解と混乱を積極的にもたらしている人物がいます。発達障害の権威が大衆向けに書いた書籍も、そのような専門家に監修された大衆向けの報道も、行政が発信する情報も、そのほとんどが「第一の罠」と「第二の罠」が張り巡らされたものばかりです。それはすべて専門家の権威を高め、その権威に対する大衆の妄信を引き起こしているのです。

 この状況に対する解決策は、まず「知る」ということです。すべては知ることから始まります。