1ページ目から読む
4/5ページ目

特定できない「本物の発達障害」議論は不毛

 ようやく、発達障害といったん診断された人たちが、その後改善されたり、完治としかいえない状態になったりすることがあると認識され始めました。それでも、「特定の療法によって治癒するような状態はそもそも発達障害ではないので、結局本物の発達障害は治るものではない」と言い張る人はいます。しかし、そのような「本物の発達障害」を特定して診断する技術が今のところ存在せず、本物ではない状態に対して誤って発達障害と診断されている現実があるのであれば、治る治らない論争ほど不毛なものはないでしょう。ここで重要なのは、治らない一辺倒から脱却し、ようやく健全な議論ができるようになってきたということです。

 発達障害を理解するためには、第一の罠と第二の罠から脱却する必要があると第一章で説明した通りですが、本書の当座の狙いは、まずは健全な議論ができる状態にすることにあります。そうすれば、今まで抑圧されてきた建設的な考えや手法が広がるからです。

「正義」を掲げる叩きたいだけの人

 発達障害に対する対処方法は、別に既存の療育や薬物療法だけではありません。発達支援、心理療法、感覚統合療法、食餌療法、栄養療法、ニューロフィードバック、自然療法、その他代替療法など、いろいろな療法や手法が実践されています。それぞれ大衆向けの書籍などもあるので、興味ある方はぜひご自身で調べてみてください。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

 ところで、SNSを中心に「医学デマ」「ニセ医療」を徹底的に追及して叩く風潮があります。冷静に分析的に問題を解説してくれる専門家もいれば、正義を掲げて特定の個人や団体を叩くネット私刑に走る人々もいます。不思議なことに、主流派から外れた人々が発信した情報の誤りや科学的根拠のない実践は徹底的に非難するのに、なぜか主流派の医師による誤った情報や危険な治療、非科学的な実践については批判が向けられないのです。正義を掲げるのであれば明らかに影響力が大きい方に鉾を向けるべきであるにもかかわらず。

 そのため、主流派ではない手段については叩かれやすいという傾向があります。叩くことが目的となっている人は、ちょっとしたことで揚げ足を取ります。そしてやたらとエビデンスを持ち出します。そのような人はエビデンスを歪めて使うのが特徴です。