昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

お上の言うことをよく聞く国民性、『翔んで埼玉』ばりの排外主義……コロナ禍があらわにしてしまったもの

日本社会のコロナ・ディスクロージャー ジェーン・スー×中野信子×磯田道史

中野 今のお話を伺って、妙に納得しました。というのも、日本にはネオリベラリズムの思想が根強くあって、その人たちが有事の際にきまって口にするのが自己責任論。一見、新しい概念のようですが、意外と古くからある根性論とも似ているんですよね。要するに「何か悪いことが起きたら、お前がやれ」と、個人の問題にする。

磯田 おっしゃるとおり。ロス型の隔離施策をやれば、感染の危険性がある場所を巡回する必要が生じるし、何か起きた場合に政府が重い責任を負わなくてはならなくなる。今回も「お家で14日間自己隔離してください」というお願いにとどめられました。でも一人暮らしの方もいる。生活支援を伴わない自己隔離は問題です。市中で蔓延し、大流行になると、多額の税金を使わざるをえなくなる。帰国・入国者に丁寧な検査対応と支援・不安解消をセットにした水際対策が大切です。

スー この前の『週刊新潮』に「コロナ禍に田中角栄が首相だったら」という特集がありました。「俺が責任を取る」というリスクテイカーの不在を示唆しているのかなと。

©文藝春秋

中野 日本社会の職階制は、実力じゃなく、その人が過去に果たした働きに対して職位が与えられる。だから職階が高い人ほど、リスクをとらなくなるんです。今のような緊急事態の対応が心もとないのは当然です。

磯田 やっぱり台湾、ベトナム、イスラエルなど、隣国と緊張関係にある臨戦態勢の国々は動きが早かった。日本は島国で75年戦争がなく、同じコロナウイルスのSARSの害もほとんどなく、当初、楽観したのが、まずかった。

スー つまり、誰がリーダーでも大勢に影響がないくらい平和な時代を、我々が享受してきたということですね。一方で、「各国のコロナ対策成功のカギは女性の感性」といったメディアのまとめ方には、違和感があります。

中野 最近、雑誌の『フォーブス』で「コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在」という特集が組まれていて、ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダーン首相の名前が挙がっていました。でも、男性に比べて女性が優秀ということではないと思うんですよ。むしろ能力のある人が、適材適所で選ばれるシステムがきちんと構築されている国は、コロナのような緊急事態でも効率よく対応できる、ということを意味するだけじゃないかと。