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対局の内容を理解したくて……私の「青嶋未来の将棋トレーニング」

対局の内容を理解したくて……私の「青嶋未来の将棋トレーニング」

第2期“書く将棋”新人王戦――忘れられない推しの名言

2020/07/24
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その3:解説つきで動画配信される青嶋先生の対局の解説書き写し

 解説つきで動画配信される対局とは、主に叡王戦と銀河戦のことです。青嶋先生の将棋を理解したい私にとって、プロの先生の解説は本当に貴重なものです。いつでも振り返ることができるように、何度か動画をくり返し視聴しながら書き写します。

その4:棋譜並べおよび棋譜の戦型別分類

 ミライの将トレその1から3をある程度こなすと青嶋先生の棋譜がたまります。そうしてたまった棋譜をあらためて並べます。並べ終わった棋譜は戦型別に分類し、バインダー(あおしまファイル)に保存します。

 棋譜並べでいちばん大切なことは、盤と駒を使って自分の手で並べることです。画面の上で駒を動かすだけでは分からないことが絶対にあるからです。

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 ちなみに私は青嶋先生と同じ左利きです。特に棋譜並べをしている時に、この事実をとても嬉しく感じます。

「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」の公式サイトには、次のようなフレーズが掲げられています。

〈キミをみちびく「やさしい本格派」〉

 将棋の勉強を始めたばかりの頃、棋譜並べという勉強法があることを知り、プロの棋譜を並べてみようと試みたことがあります。しかし指し手の意味があまりにも分からなくて、一局を最後まで並べることができませんでした。

 今では、青嶋先生の棋譜を最後まで並べることができます。「少し変わっているけれど先生はよく指す手」や「もはや先生の伝説と呼べる手」をいくつか知っています。棋風や指し手の意味を理解することは難しく、まだまだ分からないことばかりですが、以前と比べれば自力で分かる部分が増えてきました。そして、先生の対局を観戦することが本当に楽しくなりました。

AbemaTV将棋トーナメントでは、「チーム大三元」の一員として、永瀬拓矢叡王(左)と対局した ©相崎修司

 私をここまでみちびいてくれたのは青嶋先生です。そっけなくて(でも実はやさしい)棋風はおそらく本格派ではないけれど、私の大好きな青嶋先生です。

 やはり私がしてきたことは、青嶋未来の将棋トレーニングと呼べるでしょう。

 ミライの将トレを始めて1年ほど経過した頃、タイトル戦の前夜祭で青嶋先生と直接お話しできる機会を得たことがありました。2019年3月のことです。先生とふたりで話す勇気がなく、知り合いの方に会話に混ざってもらいました。そうして三人で会話をしている中で、話題がオールラウンダーである先生の戦型選択に及んだ時、先生が「勝つことだけを考えたら、いつも同じ戦型になりますよね」とおっしゃったのです。私にはその意味がまったく分かりませんでした。それはどういう意味ですか、と問い返すこともできませんでした。聞いてはいけないような気がしたからです。分かったふりをしているうちに話題が変わってしまいました。

 この言葉には、将棋がほとんど分からない私に何かを考えさせるような、大きな余白が存在していました。何かとは「先生はきっと勝つことだけを考えているわけではないのだろう」「決して勝敗がどうでもいいということではないだろう」「勝ちにこだわることと、自分の指したい戦型を選ぶことは、矛盾するのだろうか」といったことです。強い人にとってはごく普通の、何気ない言葉なのかもしれません。しかし私にとってはそうではありませんでした。

 それ以来、青嶋先生の棋譜を並べる時はいつも、先生のこの言葉が心によみがえるようになりました。このまま先生の棋譜を並べ続けていれば、いつか、この言葉の意味を自然に理解できる時が来るかもしれません。

 その時を楽しみにしながら私は今日も、明日も、10年後も、ずっとミライの将トレを続けていきたいです。

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