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91年版『東京ラブストーリー』全話観直してわかった カンチもリカも実は全員「悪人」

2020/07/27
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リカは「ちょっとメンヘラ気質のかまってちゃん」

 まずは、鈴木保奈美が演じた赤名リカ。カンチに恋をしてグイグイアプローチをしていく。現代の言葉に当てはめるなら、リカという人は“ちょっとメンヘラ気質のかまってちゃん”なのである。とかく支離滅裂な言動が多いのだ。

 第1話の前半からリカがカンチに好意を抱いている様子はわりと見て取れた。だが、さとみの電話番号を聞き出してカンチに渡してあげたり、恋のキューピッド宣言をしてカンチとさとみを引っ付けようとしたりする。そんな第1話のラストに、カンチに抱きついて「好きっ! ……あ、言っちゃった、悔しいなぁ!」と告白するのである。

 第3話では、さとみがカンチの気持ちをわからずに「ほかに好きなコできたのかなぁ」と悩んでいると、「そんなわけないよ、カンチ一途だもん」とさとみを応援。その場にカンチが合流すると「似合ってるよ、2人!」と言って2人きりにしてあげる。

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リカ役の鈴木保奈美(石橋貴明との結婚会見) ©時事通信社

 第4話では、まださとみが気になるもののリカと関係を持ってしまって気まずそうにしているカンチ。リカは察して「責任取らなきゃとか、そんなこと思ってたわけ?」、「東京の女のコってそういうことぜーんぜん気にしないんだよ」と、あたかもワンナイトラブであるかのように強調。にもかかわらず、その後カンチが「俺とお前はなんの関係もないんだからさ」と言うと、腑に落ちない表情で拗ねまくる。自分から遊びの関係だとカンチに言い聞かせておいて……めんどくささが全開すぎる。

 好きな男の幸せを願って、つい応援してしまったり身を引こうとしたりしたのだろうが、それにいちいち振り回されるカンチ視点で考えると、もう天邪鬼を通り越して理不尽の域といえるだろう。

さとみは「おでん女」として伝説を残した

 続いて、有森也実が演じた関口さとみ。“女に嫌われる女”の金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない役どころだった。

 さとみの行動原理はそんなに複雑ではない。自分に想いを寄せており、いつも優しいカンチが好き。でも女にだらしないけど男気もある三上のことはもっと好き。だから三上が自分を見てくれていれば寄っていって三上とキスするし関係も持つが、三上がほかの女とイチャこらしてトラブればすぐカンチに電話して泣きつく。全編通してほぼこの繰り返し。

「東京ラブストーリー」制作発表。左から江口洋介、有森也実、鈴木保奈美、織田裕二、千堂あきほ(1990年11月)

 そんなさとみ、第9話ラストで今なお語り草になっている「おでん女」として伝説を残すことになる。

 恋人同士のカンチとリカは、リカのロス転勤の話などがあり破局の気配が漂っていた。そこでカンチはリカを電話で呼び出し、待ち合わせて話し合う約束をするのだが、カンチが家を出ようとするとピンポーン……さとみ登場。「こないだ約束してたでしょ、おでん。作ってきたの、食べて」とカノジョ持ちの男の家に、手作りおでん持参で上がり込むのである。